防衛省の政策

 我が國を取り巻く安全保障環境は、様々な安全保障上の課題や不安定要因がより顕在化?先鋭化してきており、一層厳しさを増しています。こうした安全保障上の課題や不安定要因は、多様かつ広範であり、一國のみでは対応が困難なため、安全保障上の課題等への対応に利益を共有する各國と地域?國際社會の安定のために協調しつつ積極的に対応する必要があります。ここでは、このような認識に基づいたわが國の安全保障を確保する方策、憲法と自衛権の関係及び防衛政策の基本並びに日米安保體制の意義について説明します。

防衛の基本的考え方

わが國の安全保障

 平和と安全は、國民が安心して生活し、國が発展と繁栄を続けていく上で不可欠です。また、一國の獨立は、國が政治、経済、社會のあり方を自ら決定し、その文化、伝統や価値観を保つため、守らねばならないものです。平和、安全および獨立は、願望するだけでは確保できません。ますます相互依存関係を深めている國際社會の現狀を踏まえ、自らの防衛力とともに、外交努力、同盟國や國際社會との協力などのさまざまな施策を総合的に講じることで、初めて確保できるものです。

 特に、資源や食糧の海外依存度が高く、自由貿易に発展と繁栄の基盤を置くわが國にとっては、國際社會の平和と協調の維持がきわめて重要です。このため、わが國は、日米同盟関係をはじめとする二國間の協力関係を強化しつつ、アジア太平洋地域での地域的協力や國際連合(國連)への協力などを積極的に進め、紛爭?対立の防止や解決、経済の発展、軍備管理?軍縮の促進、海洋の安全確保、相互理解と信頼関係の増進などを図っています。また、わが國は、國內においても、國民生活を安定させ、國を守るという國民の気概の充実を図り、侵略を招くような隙を生じさせないよう、経済や教育などの分野においてさまざまな施策を講じ、安全保障基盤の確立を図っています。

 他方で、國際社會の現実を見れば、非軍事的手段による努力だけでは、必ずしも外部からの侵略を未然に防止できず、また萬一侵略を受けた場合にこれを排除することもできません。防衛力は、侵略を排除する國家の意思と能力を表す安全保障の最終的擔保であり、その機能はほかのいかなる手段によっても代替できません。このため、多様で複雑かつ重層的な安全保障課題や不安定要因に起因するさまざまな事態に的確に対応する防衛力は必要不可欠です。また、諸外國の情勢を改善してわが國に対する脅威の発生を予防するという観點から、アジア太平洋地域における協力、國際社會の一員としての協力などの分野で防衛力が果たす役割の重要性は増しています。以上のような要素を踏まえ、わが國は、適切な防衛力の整備を進めることとしています。こうした自らの適切な防衛力が、日米安全保障體制(日米安保體制)と相まって、隙のない防衛態勢を構築することで、わが國の安全が確保されています。

 わが國は、安全保障における防衛力の重要な役割を認識した上で、さまざまな分野における努力を盡くすことにより、わが國の安全を確保するとともに、アジア太平洋地域、ひいては世界の平和と安全を目指しています。

防衛政策の基本

1.國家安全保障戦略

 我が國が憲法のもとで進めている防衛政策は、これまで1957(昭和32)年に國防會議と閣議で決定された「國防の基本方針」にその基礎を置いていましたが、これに代わるものとして、2013(平成25)年12月17日に我が國として初の「國家安全保障戦略(戦略)」が國家安全保障會議及び閣議において決定されました。

 「戦略」は、我が國の國益を長期的視點から見定めた上で、外交政策及び防衛政策を中心とした國家安全保障に関する基本方針を定めたものです。これは國際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、我が國の安全及びアジア太平洋地域の平和と安定を実現しつつ、國際社會の平和と安定及び繁栄の確保にこれまで以上に積極的に寄與していくことを基本理念として明らかにしています。

 「戦略」は、我が國の防衛力について國家安全保障の最終的な擔保であるとの位置づけを明らかにしつつ、我が國を守り抜く総合的な防衛體制を構築することとしています。防衛省としては、「戦略」に基づき、実効性の高い統合的な防衛力を整備し、統合運用を基本とする柔軟かつ即応性の高い運用に努めるとともに、政府機関?地方公共団體?民間部門との連攜を強化してまいります。同時に、外交政策と密接な連攜を図りながら、日米同盟を強化しつつ、諸外國との二國間?多國間の安全保障協力を積極的に推進してまいります。

【參考】國防の基本方針

 國防の目的は、直接および間接の侵略を未然に防止し、萬一侵略が行われるときはこれを排除し、もって民主主義を基調とするわが國の獨立と平和を守ることにある。この目的を達成するための基本方針を次のとおり定める。

  1. 國際連合の活動を支持し、國際間の協調をはかり、世界平和の実現を期する。
  2. 民生を安定し、愛國心を高揚し、國家の安全を保障するに必要な基盤を確立する。
  3. 國力國情に応じ自衛のため必要な限度において、効率的な防衛力を漸進的に整備する。
  4. 外部からの侵略に対しては、將來國際連合が有効にこれを阻止する機能を果たし得るに至るまでは、米國との安全保障體制を基調としてこれに対処する。

2.防衛計畫の大綱及び中期防衛力整備計畫

「防衛計畫の大綱」(防衛大綱)は、我が國の防衛の基本方針、防衛力の意義や役割、さらには、これらに基づく、自衛隊の具體的な體制、主要裝備の整備目標の水準といった今後の防衛力の基本的指針を示すものです。

 我が國は、昭和33年度以降、4次にわたる防衛力の整備計畫に基づき、防衛力の漸進的な整備を行ってきましたが、昭和51年10月に、我が國が保有すべき防衛力の水準を明らかにし、我が國の防衛力整備のあり方などについての指針を示すものとして、「昭和52年度以降に係る防衛計畫の大綱」が國防會議と閣議で初めて決定されました。その後、冷戦の終結などの國際情勢の大きな変化、自衛隊の國際活動を含む役割に対する期待の高まりなどを踏まえて、平成7年11月に「平成8年度以降に係る防衛計畫の大綱」が、國際テロ組織の活動、大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散などが國際社會の共通の課題となっていることなどを踏まえて、平成16年12月に「平成17年度以降に係る防衛計畫の大綱」が、さらに平成22年12月に「平成23年度以降に係る防衛計畫の大綱」がそれぞれ安全保障會議と閣議で決定されました。我が國は、こうした防衛計畫の大綱に基づき、昭和61年度以降は、5年間の経費の総額と主要裝備の整備數量を示す中期防衛力整備計畫(中期防)を策定し、現在に至るまで防衛力の整備?維持?運用などを行ってきました。このような変遷を経て、平成25年12月には、我が國として初の「國家安全保障戦略」、「平成26年以降に係る防衛計畫の大綱(25大綱)」及び「中期防衛力整備計畫(平成26年度~平成30年度について)(中期防)」が國家安全保障會議と閣議で決定されました。

 平成30年12月18日に策定された「平成31年度以降に係る防衛計畫の大綱」では、宇宙?サイバー?電磁波を含む全ての領域における能力を有機的に融合した領域橫斷作戦、平時から有事までのあらゆる段階における柔軟かつ戦略的な活動の常時継続的な実施及び日米同盟の強化?安保協力の推進を可能とする、真に実効的な防衛力として、「多次元統合防衛力」を構築するとの考え方が示されました。さらに、このような考え方を中期防で具體化し、真に実効的な防衛力を構築することとしています。

「平成31年度以降に係る防衛計畫の大綱について」及び「中期防衛力整備計畫(平成31年度~平成35年度について)」

3.その他の基本政策

 「戦略」、「大綱」を受けて、わが國は、憲法のもと、専守防衛に徹し、他國に脅威を與えるような軍事大國とならないとの基本理念に従い、日米安保體制を堅持するとともに、文民統制を確保し、非核三原則を守りつつ、実効性の高い統合的な防衛力を効率的に整備していきます。

(1)専守防衛

 専守防衛とは、相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいいます。

(2)軍事大國とならないこと

 軍事大國という概念の明確な定義はありませんが、わが國が他國に脅威を與えるような軍事大國とならないということは、わが國は自衛のための必要最小限を超えて、他國に脅威を與えるような強大な軍事力を保持しないということです。

(3)非核三原則

 非核三原則とは、核兵器を持たず、作らず、持ち込ませずという原則を指し、わが國は國是としてこれを堅持しています。

 なお、核兵器の製造や保有は、原子力基本法の規定でも禁止されています。さらに、核兵器不拡散條約(NPT: Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons)により、わが國は、非核兵器國として、核兵器の製造や取得をしないなどの義務を負っています。

(4)文民統制の確保

 文民統制は、シビリアン?コントロールともいい、民主主義國家における軍事に対する政治の優先、または軍事力に対する民主主義的な政治による統制を指します。

 わが國の場合、終戦までの経緯に対する反省もあり、自衛隊が國民の意思によって整備?運用されることを確保するため、舊憲法下の體制とは全く異なり、次のような厳格な文民統制の制度を採用しています。

 國民を代表する國會が、自衛官の定數、主要組織などを法律?予算の形で議決し、また、防衛出動などの承認を行います。

 國の防衛に関する事務は、一般行政事務として、內閣の行政権に完全に屬しており、內閣を構成する內閣総理大臣その他の國務大臣は、憲法上文民でなければならないこととされています。內閣総理大臣は、內閣を代表して自衛隊に対する最高の指揮監督権を有しており、國の防衛に専任する主任の大臣である防衛大臣は、自衛隊の隊務を統括します。また、內閣には、國防に関する重要事項などを審議する機関として國家安全保障會議が置かれています。

 防衛省では、防衛大臣が國の防衛に関する事務を分擔管理し、主任の大臣として、自衛隊を管理し、運営する。その際、防衛副大臣と二人の防衛大臣政務官が政策と企畫について防衛大臣を助けることとされています。

 また、防衛大臣補佐官が、防衛省の所掌事務に関する重要事項に関し、自らが有する見識に基づき、防衛大臣に進言などを行うこととしているほか、防衛會議では、防衛大臣のもとに政治任用者、文官、自衛官の三者が一堂に會して防衛省の所掌事務に関する基本的方針について審議することとし、文民統制のさらなる徹底を図っています。

 以上のように、文民統制の制度は整備されていますが、それが実をあげるためには、國民が防衛に対する深い関心を持つとともに、政治?行政両面における運営上の努力が引き続き必要です。

防衛省の取組|ナビゲーション

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