捕虜の待遇に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ條約(第三條約)

昭和二十八年十月二十一日
條約第二十五號

第一編 総則

第一條〔條約の尊重〕

 (第一條約の第一條と同じ。)

第二條〔條約の適用〕

 (第一條約の第二條と同じ。)

第三條〔國際的性質を有しない紛爭〕

 (第一條約の第三條と同じ。)

第四條〔捕虜〕

A この條約において捕虜とは、次の部類の一に屬する者で敵の権力內に陥ったものをいう。

  • (1) 紛爭當事國の軍隊の構成員及びその軍隊の一部をなす民兵隊又は義勇隊の構成員
  • (2) 紛爭當事國に屬するその他の民兵隊及び義勇隊の構成員(組織的抵抗運動団體の構成員を含む。)で、その領域が占領されているかどうかを問わず、その領域の內外で行動するもの。但し、それらの民兵隊又は義勇隊(組織的抵抗運動団體を含む。)は、次の條件を満たすものでなければならない。
  •  (a) 部下について責任を負う一人の者が指揮していること。
  •  (b) 遠方から認識することができる固著の特殊標章を有すること。
  •  (c) 公然と武器を攜行していること。
  •  (d) 戦爭の法規及び慣例に従って行動していること。
  • (3) 正規の軍隊の構成員で、抑留國が承認していない政府又は當局に忠誠を誓ったもの
  • (4) 実際には軍隊の構成員でないが軍隊に隨伴する者、たとえば、文民たる軍用航空機の乗組員従軍記者、需品供給者、労務隊員又は軍隊の福利機関の構成員等。但し、それらの者がその隨伴する軍隊の認可を受けている場合に限る。このため、當該軍隊は、それらの者に附屬書のひな型と同様の身分証明書を発給しなければならない。
  • (5) 紛爭當事國の商船の乗組員(船長、水先人及び見習員を含む。)及び民間航空機の乗組員で、國際法の他のいかなる規定によっても一層有利な待遇の利益を享有することがないもの
  • (6) 占領されていない領域の住民で、敵の接近に當り、正規の軍隊を編成する時日がなく、侵入する軍隊に抵抗するために自発的に武器を執るもの。但し、それらの者が公然と武器を攜行し、且つ、戦爭の法規及び慣例を尊重する場合に限る。

B 次の者も、また、この條約に基いて捕虜として待遇しなければならない。

  • (1) 被占領國の軍隊に所屬する者又は當該軍隊に所屬していた者で、特に戦闘に従事している所屬軍隊に復帰しようとして失敗した場合又は抑留の目的でされる召喚に応じなかった場合に當該軍隊への所屬を理由として占領國が抑留することを必要と認めるもの。その占領國が、その者を捕虜とした後、その占領する領域外で敵対行為が行われていた間にその者を解放したかどうかを問わない。
  • (2) 本條に掲げる部類の一に屬する者で、中立國又は非交戦國が自國の領域內に収容しており、且つ、その國が國際法に基いて抑留することを要求されるもの。但し、それらの者に対しては、その國がそれらの者に與えることを適當と認める一層有利な待遇を與えることを妨げるものではなく、また、第八條、第十條、第十五條、第三十條第五項、第五十八條から第六十七條まで、第九十二條及び第百二十六條の規定並びに、紛爭當事國と前記の中立國又は非交戦國との間に外交関係があるときは、この條約の利益保護國に関する規定を適用しないものとする。前記の外交関係がある場合には、それらの者が屬する紛爭當事國は、それらの者に対し、この條約で規定する利益保護國の任務を行うことを認められる。但し、當該紛爭當事國が外交上及び領事業務上の慣習及び條約に従って通常行う任務を行うことを妨げない。

C 本條は、この條約の第三十三條に規定する衛生要員及び宗教要員の地位に何らの影響を及ぼすものではない。

第五條〔適用の始期及び終期〕

 この條約は、第四條に掲げる者に対し、それらの者が敵の権力內に陥った時から最終的に解放され、且つ、送還される時までの間、適用する。

 交戦行為を行って敵の権力內に陥った者が第四條に掲げる部類の一に屬するかどうかについて疑が生じた場合には、その者は、その地位が権限のある裁判所によって決定されるまでの間、この條約の保護を享有する。

第六條〔特別協定〕

 締約國は、第十條、第二十三條、第二十八條、第三十三條、第六十條、第六十五條、第六十六條、第六十七條、第七十二條、第七十三條、第七十五條、第百九條、第百十條、第百十八條、第百十九條、第百二十二條及び第百三十二條に明文で規定する協定の外、別個に規定を設けることを適當と認めるすべての事項について、他の特別協定を締結することができる。いかなる特別協定も、この條約で定める捕虜の地位に不利な影響を及ぼし、又はこの條約で捕虜に與える権利を制限するものであってはならない。

 捕虜は、この條約の適用を受ける間は、前記の協定の利益を引き続き享有する。但し、それらの協定に反対の明文規定がある場合又は紛爭當事國の一方若しくは他方が捕虜について一層有利な措置を執った場合は、この限りでない。

第七條〔権利の不放棄〕

 (第一條約の第七條と同じ。)

第八條〔利益保護國〕

 (第一條約の第八條と同じ。)

第九條〔赤十字國際委員會の活動〕

 (第一條約の第九條と同じ。)

第十條〔利益保護國の代理〕

 (第一條約の第十條と同じ。)

第十一條〔調停手続〕

 (第一條約の第十一條と同じ。)

第二編 捕虜の一般的保護

第十二條〔捕虜の待遇の責任〕

 捕虜は、敵國の権力內にあるものとし、これを捕えた個人又は部隊の権力內にあるものではない。抑留國は、個人の責任があるかどうかを問わず、捕虜に與える待遇について責任を負う。

 捕虜は、抑留國が、この條約の締約國に対し、當該締約國がこの條約を適用する意思及び能力を有することを確認した後にのみ、移送することができる。捕虜が前記により移送されたときは、捕虜を受け入れた國は、捕虜を自國に抑留している間、この條約を適用する責任を負う。

 もっとも、捕虜を受け入れた國がいずれかの重要な點についてこの條約の規定を実施しなかった場合には、捕虜を移送した國は、利益保護國の通告に基いて、その狀態を改善するために有効な措置を執り、又は捕虜の返還を要請しなければならない。この要請には、従わなければならない。

第十三條〔捕虜の人道的待遇〕

 捕虜は常に人道的に待遇しなければならない。抑留國の不法の作為又は不作為で、抑留している捕虜を死に至らしめ、又はその健康に重大な危険を及ぼすものは、禁止し、且つ、この條約の重大な違反と認める。特に、捕虜に対しては、身體の切斷又はあらゆる種類の醫學的若しくは科學的実験で、その者の醫療上正當と認められず、且つ、その者の利益のために行われるものでないものを行ってはならない。

 また、捕虜は、常に保護しなければならず、特に、暴行又は脅迫並びに侮辱及び公衆の好奇心から保護しなければならない。

 捕虜に対する報復措置は、禁止する。

第十四條〔捕虜の身體の尊重〕

 捕虜は、すべての場合において、その身體及び名譽を尊重される権利を有する。

 女子は、女性に対して払うべきすべての考慮をもって待遇されるものとし、いかなる場合にも、男子に與える待遇と同等に有利な待遇の利益を受けるものとする。

 捕虜は、捕虜とされた時に有していた完全な私法上の行為能力を保持する。抑留國は、捕虜たる身分のためやむを得ない場合を除く外、當該國の領域の內外においてその行為能力に基く権利の行使を制限してはならない。

第十五條〔捕虜の給養〕

 捕虜を抑留する國は、無償で、捕虜を給養し、及びその健康狀態に必要な醫療を提供しなければならない。

第十六條〔平等な待遇〕

 階級及び性別に関するこの條約の規定に考慮を払い、また、健康狀態、年令又は職業上の能力を理由として與えられる有利な待遇を留保して、捕虜は、すべて、抑留國が人種、國籍、宗教的信條若しくは政治的意見に基く差別又はこれらに類する基準によるその他の差別をしないで均等に待遇しなければならない。

第三編 捕虜たる身分

第一部 捕虜たる身分の開始

第十七條〔捕虜の尋問〕

 各捕虜は、尋問を受けた場合には、その氏名、階級及び生年月日並びに軍の番號、連隊の番號、個人番號又は登録番號(それらの番號がないときは、それに相當する事項)については答えなければならない。

 捕虜は、故意に前記の規定に違反したときは、その階級又は地位に応じて與えられる特権に制限を受けることがあるものとする。

 各紛爭當事國は、その管轄の下にある者で捕虜となることがあるもののすべてに対し、その氏名、階級、軍の番號、連隊の番號、個人番號若しくは登録番號又はそれらの番號に相當する事項及び生年月日を示す身分証明書を発給しなければならない。身分証明書には、更に、本人の署名若しくは指紋又はその雙方及び紛爭當事國が自國の軍隊に屬する者に関し追加することを希望するその他の事項を掲げることができる。身分証明書は、できる限り、縦橫がそれぞれ六?五センチメートル及び十センチメートルの規格で二部作成するものとする。捕虜は、要求があった場合には、身分証明書を呈示しなければならない。但し身分証明書は、いかなる場合にも、取り上げてはならない。

 捕虜からいかなる種類の情報を得るためにも、これに肉體的又は精神的拷問その他の強制を加えてはならない。回答を拒む捕虜に対しては、脅迫し、侮辱し、又は種類のいかんを問わず不快若しくは不利益な待遇を與えてはならない。

 肉體的又は精神的狀態によって自己が何者であるかを述べることができない捕虜は、衛生機関に引き渡さなければならない。それらの捕虜が何者であるかは、前項の規定に従うことを留保して、すべての可能な力法によって識別して置かなければならない。

 捕虜に対する尋問は、その者が理解する言語で行わなければならない。

第十八條〔捕虜の財産〕

 すべての個人用品(武器、馬、軍用裝具及び軍用書類を除く。)及び金屬かぶと、防毒面その他の身體の防護のために交付されている物品は、捕虜が引き続いて所持するものとする。捕虜の衣食のために用いられる物品も、正規の軍用裝具に屬するかどうかを問わず、捕虜が引き続いて所持するものとする。

 捕虜は、常に身分証明書を攜帯しなければならない。抑留國は、身分証明書を所持していない捕虜に対しては、これを與えなければならない。

 階級及び國籍を示す記章、勲章並びに主として個人的又は感情的価値のみを有する物品は、捕虜から取り上げてはならない。

 捕虜が所持する金銭は、將校の命令によってでなければ、且つ、金額及び所持者の詳細を特別の帳簿に記入し、並びに受領証発行人の氏名、階級及び部隊を読みやすく記載した詳細な受領証を発給した後でなければ、取り上げてはならない。抑留國の通貨で有する額又は捕虜の要請により抑留國の通貨に両替した額は、第六十四條に定めるところにより、捕虜の勘定に貸記しなければならない。

 抑留國は、安全を理由とする場合にのみ、捕虜から有価物を取り上げることができる。有価物を取り上げる場合には金銭を取り上げる場合について定める手続と同一の手続を適用しなければならない。

 前記の有価物は、捕虜から取り上げた金銭で抑留國の通貨でなく、且つ、所持者からその両替を要請されなかったものとともに、抑留國が保管し、及び捕虜たる身分の終了の際原狀で捕虜に返還しなければならない。

第十九條〔捕虜の後送〕

 捕虜は、捕虜とされた後できる限りすみやかに、戦闘地域から充分に離れた危険の圏外にある地域の収容所に後送しなければならない。②負傷又は病気のため、後送すれば現在地にとどめるよりも大きな危険にさらすこととなる捕虜に限り、これを一時的に危険地帯にとどめることができる。

 捕虜は、戦闘地域から後送するまでの間に、不必要に危険にさらしてはならない。

第二十條〔後送の條件〕

 捕虜の後送は、常に、人道的に、且つ、抑留國の軍隊の移駐の場合に適用される條件と同様の條件で行わなければならない。

 抑留國は、後送中の捕虜に対し、食糧及び飲料水を充分に供給し、且つ、必要な被服及び醫療上の手當を與えなければならない。抑留國は、捕虜の後送中その安全を確保するために適當なすべての予防措置を執り、且つ、後送される捕虜の名簿をできる限りすみやかに作成しなければならない。

 捕虜が後送中に通過収容所を経由しなければならない場合には、その収容所における捕虜の滯在は、できる限り短期間のものとしなければならない。

第二部 捕虜の抑留

第一章 総則

第二十一條〔移動の自由の制限〕

 抑留國は、捕虜を抑留して置くことができる。抑留國は、捕虜に対し、抑留されている収容所から一定の限界をこえて離れない義務又は、その収容所にさくをめぐらしてある場合には、そのさくの外に出ない義務を課することができる。刑罰及び懲戒罰に関するこの條約の規定を留保し、捕虜は、衛生上の保護のために必要な場合を除く外、拘禁してはならない。この拘禁は、その時の狀況により必要とされる期間をこえてはならない。

 捕虜は、その屬する國の法令により許される限り、宣誓又は約束に基いて不完全又は完全に解放することができる。この措置は、特に、捕虜の健康狀態を改善するために役立つ場合に執るものとする。捕虜に対しては、宣誓又は約束に基く解放を受諾することを強制してはならない。

 各紛爭當事國は、敵対行為が始まったときは、自國民が宣誓又は約束に基いて解放されることを受諾することを許可し、又は禁止する法令を敵國に通告しなければならない。こうして通告された法令に従って宣誓又は約束をした捕虜は、その個人的名譽に基いて、その者が屬する國及びその者を捕虜とした國に対して宣誓及び約束に係る約定を果す義務を負う。この場合には、その者が屬する國は、宣誓又は約束に反する役務をその者に要求し、また、その者から受けてはならない。

第二十二條〔抑留場所及び抑留條件〕

 捕虜は、衛生上及び保健上のすべての保障を與える地上の建物にのみ抑留することができる。捕虜は、捕虜自身の利益になると認められる特別の場合を除く外、懲治所に抑留してはならない。

 不健康な地域又は気候が捕虜にとって有害である地域に抑留されている捕虜は、できる限りすみやかに一層気候の良い地域に移さなければならない。

 抑留國は、捕虜の國籍、言語及び習慣に応じて、捕虜を二以上の収容所又は収容所內の區畫に分類収容しなければならない。但し、捕虜が同意しない限り、その者が捕虜となった時に勤務していた軍隊に屬する捕虜と分離してはならない。

第二十三條〔捕虜の安全〕

 捕虜は、いかなる場合にも戦闘地域の砲火にさらされる虞のある地域に送り、又は抑留してはならず、捕虜の所在は、特定の地點又は區域が軍事行動の対象とならないようにするために利用してはならない。

 抑留國は、利益保護國の仲介により、関係國に対し、捕虜収容所の地理的位置に関するすべての有益な情報を提供しなければならない。

 捕虜収容所は、軍事上許される場合にはいつでも、晝間は、空中から明白に識別することができるPW又はPGという文字によって表示しなければならない。但し、関係國は、その他の表示の方法についても合意することができる。それらの表示は、捕虜収容所のみに使用するものとする。

第二十四條〔常設通過収容所〕

 通過又は審査のための常設的性質を有する収容所には、この部に定める條件と同様の條件で設備を施さなければならず、それらの収容所にある捕虜は、他の収容所にある場合と同一の待遇を受けるものとする。

第二章 捕虜の営舎、食糧及び被服

第二十五條〔営舎〕

 捕虜の宿営條件は、同一の地域に宿営する抑留國の軍隊についての宿営條件と同様に良好なものでなければならない。この條件は、捕虜の風俗及び習慣を考慮に入れたものでなければならず、いかなる場合にも、捕虜の健康に有害なものであってはならない。

 前項の規定は、特に捕虜の寢室に対し、その総面積及び最少限度の空間並びに一般的設備、寢具及び毛布について適用があるものとする。

 捕虜の個人的又は集団的使用に供する建物は、完全に濕気を防止し、並びに充分に保溫し、及び點燈しなければならない。特に、日沒から消燈時までの間は、點燈しなければならない。火災の危険に対しては、萬全の予防措置を執らなければならない。

 女子の捕虜が男子の捕虜とともに宿泊する収容所においては、女子のために分離した寢室を設けなければならない。

第二十六條〔食糧〕

 毎日の食糧の基準配給の量、質及び種類は、捕虜を良好な健康狀態に維持し、且つ、體重の減少又は栄養不良を防止するのに充分なものでなければならない。捕虜の食習慣も、また、考慮に入れなければならない。

 抑留國は、労働する捕虜に対し、その者が従事する労働に必要な食糧の増配をしなければならない。

 捕虜に対しては、飲料水を充分に供給しなければならない。喫煙は、許さなければならない。

 捕虜は、できる限り、その食事の調理に參加させなければならない。このため、捕虜は、炊事場で使用することができる。捕虜に対しては、また、その所持する別の食糧を自ら調理する手段を與えなければならない。

 捕虜に食堂として使用させるため、適當な場所を提供しなければならない。

 食糧に影響を及ぼす集団的の懲戒は、禁止する。

第二十七條〔被服〕

 抑留國は、捕虜が抑留されている地城の気候に考慮を払い、捕虜に被服、下著及びはき物を充分に供給しなければならない。抑留國が獲得した敵の軍隊の制服は、気候に適する場合には、捕虜の被服としてその用に供しなければならない。

 抑留國は、前記の物品の交換及び修繕を規則的に行わなければならない。更に労働する捕虜に対しては、労働の性質上必要な場合には、適當な被服を支給しなければならない。

第二十八條〔酒保〕

 すべての収容所には、捕虜が食糧、石けん及びたばこ並びに通常の日用品を買うことができる酒保を設備しなければならない。それらの価額は、現地の市場価額をこえるものであってはならない。

 収容所の酒保が得た益金は、捕虜のために用いなければならない。このため、特別の基金を設けなければならない。捕虜代表は、酒保及びその基金の運営に協力する権利を有する。

 収容所が閉鎖された場合には、前記の特別の基金の殘額は、その基金を積み立てた捕虜と同一の國籍を有する捕虜のために用いられるように、人道的な國際機関に引き渡さなければならない。全般的の送還の場合には、関係國間に反対の協定がない限り、前記の益金は、抑留國に殘されるものとする。

第三章 衛生及び醫療

第二十九條〔衛生〕

 抑留國は、収容所の清潔及び衛生の確保並びに伝染病の防止のために必要なすべての衛生上の措置を執らなければならない。

 捕虜に対しては、日夜、衛生上の原則に合致する設備で常に清潔な狀態に維持されるものをその用に供しなければならない。女子の捕虜が宿営している収容所においては、女子のために分離した設備を設けなければならない。

 また、捕虜に対しては、収容所に設備することを必要とする浴場及びシャワーの外、身體の清潔及び被服の洗たくのために水及び石けんを充分に供給しなければならない。このため、捕虜に対しては、必要な設備、便益及び時間を與えなければならない。

第三十條〔治療〕

 各収容所には、捕虜がその必要とする治療及び適當な食事を受けることができる適當な病舎を備えなければならない。必要がある場合には、伝染病及び精神病にかかった患者のために隔離室を設けなければならない。

 重病の捕虜又は特別の治療、外科手術若しくは入院を必要とする狀態にある捕虜は、その送還が近い將來に予定されている場合にも、適當な処置をする能力がある軍又は軍以外の醫療施設に収容しなければならない。身體障害者、特に、盲者に與えるべき救護及びその更生については、その者の送還までの間、特別の便益を與えなければならない。

 捕虜は、なるべくその屬する國の衛生要員、できれば自己と同一の國籍を有する衛生要員によって治療を受けるものとする。

 捕虜に対しては、診察を受けるために醫療當局に出頭することを妨げてはならない。抑留國の當局は、要請があったときは、治療を受けた各捕虜に対し、その病気又は負傷の性質並びに治療の期間及び種類を記載した公の証明書を発給しなければならない。その証明書の寫一通は、中央捕虜情報局に送付しなければならない。

 治療の費用(捕虜を良好な健康狀態に保つために必要なすべての器具、特に、義歯その他の補裝具及びめがねの費用を含むJは、抑留國が負擔しなければならない。

第三十一條〔身體検査〕

 捕虜の身體検査は、少くとも月に一回行わなければならない。その検査は、各捕虜の體重の測定及び記録を含むものでなければならない。その検査は、特に、捕虜の健康、栄養及び清潔狀態の一般的狀態を監視し、並びに伝染病、特に結核、マラリヤ及び性病を検出することを目的としなければならない。このため、結核の早期検出のためのエックス線による集団的小型寫真の定期的撮影等利用可能な最も有効な方法を用いなければならない。

第三十二條〔醫療上の業務に従事する捕虜〕

 抑留國は、軍隊の衛生機関に屬さない捕虜で醫師、歯科醫師、看護婦又は看護員であるものに対し、同一の國に屬する捕虜のために醫療上の業務に従事することを要求することができる。この場合には、その者は、引き続き捕虜とされるが、抑留國が抑留する同階級の衛生要員の待遇に相當する待遇を受けるものとする。その者は、第四十九條に基く他の労働を免除される。

第四章 捕虜を援助するため抑留される衛生要員及び宗教要員

第三十三條〔要員の権利及び特権〕

 抑留國が捕虜を援助するため抑留する衛生要員及び宗教要員は、捕虜と認めてはならない。但し、それらの要員は、少くともこの條約の利益及び保護を受けるものとし、また、捕虜に対して醫療上の看護及び宗教上の役務を提供するため必要なすべての便益を與えられるものとする。

 それらの要員は、抑留國の軍法の範囲內で、抑留國の権限のある機関の管理の下に、職業的良心に従って、捕虜、特に自己が屬する軍隊に屬する捕虜の利益のために醫療又は宗教に関する任務を引き続き遂行しなければならない。それらの要員は、また、醫療上又は宗教上の任務を遂行するため、次の便益を與えられるものとする。

  • (a) それらの要員は、収容所外にある労働分遣所又は病院にいる捕虜を定期的に訪問することを許される。このため、抑留國は、それらの要員に対し、必要な輸送手段を自由に使用させなければならない。
  • (b) 各収容所の先任軍醫たる衛生要員は、抑留されている衛生要員の活動に関連するすべての事項について、収容所の軍當局に対して責任を負う。このため、紛爭當事國は、敵対行為の開始の際、衛生要員(戦地にある軍隊の傷者及び病者の狀態の改善に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ條約第二十六條に掲げる団體の衛生要員を含む。)の相互に相當する階級に関して合意しなければならない。この先任軍醫及び宗教要員は、その任務に関するすべての事項について、収容所の権限のある當局と直接に交渉する権利を有する。その當局は、それらの者に対し、それらの事項に関する通信のため必要なすべての便益を與えなければならない。
  • (c) それらの要員は、抑留されている収容所の內部の紀律に従わなければならないが、その醫療上又は宗教上の任務に関係がない労働を強制されないものとする。

 紛爭當事國は、敵対行為の継続中に、前記の抑留された要員について行うことがある交替に関して合意し、及びその手続を定めなければならない。

 前記の規定は、捕虜に関する醫療又は宗教の分野における抑留國の義務を免除するものではない。

第五章 宗教的、知的及び肉體的活動

第三十四條〔宗教上の義務〕

 捕虜は、軍當局が定める日常の紀律に従うことを條件として、自己の宗教上の義務の履行(自己の宗教の儀式に出席することを含む。)について完全な自由を享有する。

 捕虜に対しては、宗教的儀式を行う適當な場所を提供しなければならない。

第三十五條〔留置される宗教要員〕

 敵の権力內に陥った宗教要員で、捕虜を援助するために殘留し、又は抑留されているものは、その宗教的良心に従って捕虜に対して宗教上の任務を行うこと及び同一の宗教に屬する捕虜に対して自由に自己の聖職を行うことを許さなければならない。それらの要員は、同一の軍隊に屬し、同一の言語を話し、又は同一の宗教に屬する捕虜がいる各種の収容所及び労働分遣所に配屬しなければならない。それらの要員は、所屬する収容所外にある捕虜を訪問するため必要な便益(第三十三條に規定する輸送手段を含む。)を享有する。それらの要員は、検閲を受けることを條件として、その宗教上の任務に関する事項について抑留國の宗教機関及び國際的宗教団體と通信する自由を有する。それらの要員がこのために発送する手紙及び葉書は、第七十一條に規定する割當外のものとする。

第三十六條〔聖職者たる捕虜〕

 聖職者たる捕虜でその屬する軍隊の宗教要員となっていないものは、宗派のいかんを問わず、同一の宗派に屬する者に対して自由に宗教上の任務を行うことを許される。このため、その者は、抑留國が抑留する宗教要員と同様の待遇を受けるものとする。その者は、他のいかなる労働も強制されないものとする。

第三十七條〔自己の宗教の聖職者を持たない捕虜〕

 捕虜が、抑留された宗教要員又は自己の宗派に屬する聖職者たる捕虜の援助を受けない場合には、その捕虜の宗派その他これに類する宗派に屬する聖職者又は、その聖職者がないときは、宗教的見地から可能であれば資格がある非聖職者が、當該捕虜の要請に応じて援助の任務を果すために指名されなければならない。この指名は、抑留國の承認を條件として、當該捕虜及び、必要があるときは、同一の宗教の現地の宗教機関の同意を得て行わなければならない。こうして指名された者は、抑留國が紀律及び軍事上の安全のために設ける規制に服さなければならない。

第三十八條〔娯楽、研究、運動競技〕

 抑留國は、各捕虜の個人的趣味を尊重して、捕虜の知的、教育的及び娯楽的活動並びに運動競技を奨勵しなければならない。抑留國は、捕虜に適當な場所及び必要な設備を提供して、捕虜がそれらの活動をするため必要な措置を執らなければならない。

 捕虜に対しては、身體の運動(運動競技を含む。)をする機會及び戸外にいる機會を與えなければならない。このため、すべての収容所で充分な空地を提供しなければならない。

第六章 紀律

第三十九條〔管理、敬禮〕

 各捕虜収容所は、抑留國の正規の軍隊に屬する責任のある將校の直接の指揮下に置かなければならない。その將校は、この條約の謄本を所持し、収容所職員及び警備員がこの條約の規定を確実に知っているようにし、並びに自國の政府の指示の下でこの條約の適用について責任を負わなければならない。

 捕虜(將校を除く。)は、抑留國のすべての將校に対し、敬禮をし、及び自國の軍隊で適用する規則に定める敬意の表示をしなければならない。

 將校たる捕虜は、抑留國の上級の將校に対してのみ敬禮をするものとする。但し、収容所長に対しては、その階級のいかんを問わず、敬禮をしなければならない。

第四十條〔記章及び勲章〕

 階級及び國籍を示す記章並びに勲章の著用は、許さなければならない。

第四十一條〔條約、矯則の掲示〕

 各収容所には、この條約及びその附屬書の本文並びに第六條に規定するすべての特別協定の內容を、捕虜の用いる言語により、すべての捕虜が読むことができる場所に掲示して置かなければならない。この掲示の寫は、掲示に接する機會がない捕虜に対しては、その請求があったときに與えなければならない。

 捕虜の行動に関する各種の規則、命令、通告及び公示は、捕虜が理解する言語によって伝えなければならない。それらの規則、命令、通告及び公示は、前項に定める方法で掲示しなければならず、その寫は、捕虜代表に交付しなければならない。捕虜に対して個人的に発する命令及び指令も、當該捕虜が理解する言語によらなければならない。

第四十二條〔武器の使用〕

 捕虜、特に、逃走し、又は逃走を企てる捕虜に対する武器の使用は、最後の手段とし、それに先だって時宜に適した警告を必ず與えなければならない。

第七章 捕虜の階級

第四十三條〔階級の通知〕

 紛爭當事國は、敵対行為の開始の際、同等の階級に屬する捕虜の間における待遇の平等を確保するため、この條約の第四條に掲げるすべての者の組織上の名稱及び階級を相互に通知しなければならない。その後に設けた組織上の名稱及び階級も、同様に通知しなければならない。

 抑留國は、捕虜が屬する國によって正規に通告された捕虜の階級の昇進を承認しなければならない。

第四十四條〔將校の待遇〕

 將校たる捕虜及び將校に相當する地位の捕虜は、その階級及び年令に適當な考慮を払って待遇しなければならない。

 將校収容所における役務を確保するため、同一軍隊の兵たる捕虜でできる限り同一の言語を話すものが、將校たる捕虜及び將校に相當する地位の捕虜の階級を考慮して、充分な人數だけ同収容所に派遣されなければならない。それらの兵に対しては、他のいかなる労働も要求してはならない。

 將校自身による食事の管理に対しては、すべての方法で便益を與えなければならない。

第四十五條〔その他の捕虜の待遇〕

 將校たる捕虜及び將校に相當する地位の捕虜以外の捕虜は、その階級及び年令に適當な考慮を払って待遇しなければならない。

 それらの捕虜自身による食事の管理に対しては、すべての方法で便益を與えなければならない。

第八章 収容所に到著した後の捕虜の移動

第四十六條〔條件〕

 抑留國は、捕虜の移動を決定するに當っては、捕虜自身の利益について、特に、捕虜の送還を一層困難にしないことについて考慮しなければならない。

 捕虜の移動は、常に、人道的に、且つ、抑留國の軍隊の移動の條件よりも不利でない條件で行わなければならない。捕虜の移動については、常に、捕虜が慣れている気候條件を考慮しなければならず、移動の條件は、いかなる場合にも、捕虜の健康を害するものであってはならない。

 抑留國は、移動中の捕虜に対し、その健康を維持するために充分な食糧及び飲料水並びに必要な被服、宿舎及び醫療上の手當を供與しなければならない。抑留國は、特に、海上又は空中の輸送の場合には、移動中の捕虜の安全を確保するため、適當な予防措置を執らなければならない。抑留國は、移動される捕虜の完全な名簿をその出発前に作成しなければならない。

第四十七條〔移動してはならない場合〕

 傷者又は病者たる捕虜は、移動によって回復を妨げられる虞がある間は、移動してはならない。但し、それらの者の安全のために絶対に移動を必要とする場合は、この限りでない。

 戦線が収容所に接近した場合には、その収容所の捕虜は、移動を充分に安全な條件で行うことができるとき、又は捕虜を現地にとどめれば移動した場合におけるよりも一層大きな危険にさらすこととなるときを除く外、移動してはならない。

第四十八條〔移動のための手続〕

 移動の場合には、捕虜に対し、その出発及び新たな郵便用あて名について正式に通知しなければならない。その通知は、捕虜がその荷物を準備し、及びその家族に通報することができるように、充分に早く與えなければならない。

 捕虜に対しては、その個人用品並びに受領した通信及び小包を攜帯することを許さなければならない。それらの物品の重量は、移動の條件により必要とされるときは、各捕虜が運ぶことができる適當な重量に制限することができる。その重量は、いかなる場合にも、捕虜一人について二十五キログラムをこえてはならない。

 舊収容所にあてられた通信及び小包は、遅滯なく捕虜に転送しなければならない。収容所長は、捕虜代表と協議して、捕虜の共有物及び本條第二項に基いて課せられる制限により捕虜が攜帯することができない荷物の輸送を確保するため必要な措置を執らなければならない。

 移動の費用は、抑留國が負擔しなければならない。

第三部 捕虜の労働

第四十九條〔一般的観察〕

 抑留國は、特に捕虜の身體的及び精神的健康狀態を良好にして置くため、捕虜の年令、性別、階級及び身體的適性を考慮して、健康な捕虜を労働者として使用することができる。

 下士官たる捕虜に対しては、監督者としての労働のみを要求することができる。その要求を受けなかった下士官たる捕虜は、自己に適する他の労働を求めることができる。この労働は、できる限り、それらの者に與えなければならない。

 將校又はこれに相當する地位の者が自己に適する労働を求めたときは、その労働は、できる限り、それらの者に與えなければならない。但し、それらの者に対しては、いかなる場合にも、労働を強制してはならない。

第五十條〔承認された労働〕

 捕虜に対しては、収容所の管理、営繕又は維持に関連する労働の外、次の種類に含まれる労働に限り、これに従事することを強制することができる。

  • (a) 農業
  • (b) 原料の生産又は採取に関連する産業、製造工業(や金業、機械工業及び化學工業を除く。)並びに軍事的性質又は軍事的目的を有しない土木業及び建築業
  • (c) 軍事的性質又は軍事的目的を有しない運送業及び倉庫業
  • (d) 商業並びに蕓術及び工蕓
  • (e) 家內労働
  • (f) 軍事的性質又は軍事的目的を有しない公益事業

 前項の規定に対する違反があった場合には、捕虜は、第七十八條に従って、苦情を申し立てる権利を行使することができる。

第五十一條〔労働條件〕

 捕虜に対しては、特に宿営、食糧、被服及び器具に関し、適當な労働條件を與えなければならない。その條件は、類似の労働に従事する抑留國の國民が享有する條件よりも低い條件であってはならない。また、気候條件も、考慮しなければならない。

 抑留國は、捕虜を労働者として使用するに當っては、捕虜が労働する地域において、労働の保護に関する國內法令、特に労働者の安全に関する法令を正當に適用することを確保しなければならない。

 捕虜に対しては、作業訓練をしなければならず、また、捕虜が従事すべき労働に適した保護のための用具で抑留國の國民に與える保護のための用具と同様のものを與えなければならない。第五十二條の規定を留保して、文民たる労働者が負擔する通常の危険は、捕虜にも負擔させることができる。

 労働條件は、いかなる場合にも、懲戒の方法によって一層苦しいものとしてはならない。

第五十二條〔危険又は不健康な労働〕

 捕虜は、自ら希望しない限り、不健康又は危険な労働に使用してはならない。

 捕虜は、抑留國の軍隊の構成員にとっても屈辱的であると認められる労働には使用してはならない。

 機雷、地雷その他これらに類する機器の除去は、危険な労働と認める。

第五十三條〔労働時間〕

 捕虜の毎日の労働時間(往復に要する時間を含む。)は、過度であってはならず、いかなる場合にも、抑留國の國民で同一の労働に使用される當該地方の文民たる労働者について許される労働時間をこえてはならない。

 捕虜に対しては、毎日の労働の中間において少くとも一時間の休憩時間を與えなければならない。この休憩時間は、抑留國の労働者が一層長い休憩時間を與えられる場合には、その休憩時間と同一のものとする。この休憩時間の外、なるべく日曜日又は出身國における休日に、一週間について連続二十四時間の休暇を與えなければならない。更に、一年間労働に従事した捕虜に対しては、連続八日間の有給休暇を與えなければならない。

 出來高払の労働のような労働の方法が採用されるときは、それによって労働時間を過度にすることがあってはならない。

第五十四條〔労働賃金〕

 捕虜に支払うべき労働賃金は、この條約の第六十二條の規定に従って定める。

 労働災害を被った捕虜又は労働の際若しくは労働の結果疾病にかかった捕虜に対しては、その者の狀態により必要とされるすべての看護を施さなければならない。更に、抑留國は、當該捕虜に対し、その者が屬する國に請求をすることができるように診斷書を発給し、また、その診斷書の寫一通を第百二十三條に定める中央捕虜情報局に送付しなければならない。

第五十五條〔身體検査〕

 捕虜の労働上の適性は、少くとも毎月一回、身體検査によって定期的に確かめなければならない。その検査においては、捕虜に対して要求する労働の性質を特に考慮しなければならない。

 捕虜は、労働することができないと自ら認めたときは、その収容所の醫療當局する捕虜の間における待遇の平等を確保するため、この條約の第四條に掲げるすべての者の組織上の名稱及び階級を相互に通知しなければならない。その後に設けた組織上の名稱及び階級も、同様に通知しなければならない。

第五十六條〔労働分遣所〕

 労働分遣所の組織及び管理は、捕虜収容所の組織及び管理と同様のものでなければならない。

 各労働分遣所は、捕虜収容所の一の監督の下に置かれ、管理上その一部とされる。當該収容所の軍當局及び所長は、自國の政府の指示の下で、當該労働分遣所におけるこの條約の規定の遵守について責任を負う。

 収容所長は、その収容所に所屬する労働分遣所の最新の記録を保管し、また、その収容所を訪問することがある利益保護國、赤十字國際委員會又は捕虜に援助を與えるその他の団體の代表に対してその記録を送付しなければならない。

第五十七條〔私人のために労働する捕虜〕

 私人のために労働する捕虜の待遇は、その私人がその捕虜の監視及び保護について責任を負う場合にも、この條約で定める待遇よりも不利な待遇であってはならない。抑留國並びにその捕虜が屬する収容所の軍當局及び所長は、その捕虜の給養、看護、待遇及び労働賃金の支払について完全な責任を負う。

 その捕虜は、その従屬する収容所の捕虜代表と連絡を保つ権利を有する。

第四部 捕虜の金銭収入

第五十八條〔現金〕

 敵対行為が始まったときは、抑留國は、利益保護國と取極をするまでの間、現金又はそれに類する形式で捕虜が所持することができる最高限度の額を定めることができる。捕虜の正當な所有に屬するこれをこえる額で、取り上げられ、又は留置されたものは、捕虜が預託した金銭とともに捕虜の勘定に入れなければならず、また、捕虜の同意を得ないで他の通貨に両替してはならない。

 捕虜が収容所外で役務又は物品を購入して現金を支払うことを許される場合には、その支払は、捕虜自身又は収容所の當局が行うものとし、當該捕虜の勘定に借記するものとする。抑留國は、これに関して必要な規則を定めるものとする。

第五十九條〔捕虜から取り上げた現金〕

 捕虜となった時に捕虜から第十八條に従って取り上げた抑留國の通貨たる現金は、この部の第六十四條の規定に従って各捕虜の勘定に貸記しなければならない。

 捕虜となった時に捕虜から取り上げたその他の通貨を抑留國の通貨に両替した時も、各捕虜の勘定に貸記しなければならない。

第六十條〔俸給の前払〕

 抑留國は、すべての捕虜に対し、毎月俸給を前払しなければならない。その額は、次の額を抑留國の通貨に換算した額とする。

  • 第一類 軍曹より下の階級の捕虜 八スイス?フラン
  • 第二類 軍曹その他の下士官又はこれに相當する階級の捕虜 十二スイス?フラン
  • 第三類 準士官及び少佐より下の階級の將校又はこれらに相當する階級の捕虜 五十スイス?フラン
  • 第四類 少佐、中佐及び大佐又はこれらに相當する階級の捕虜 六十スイス?フラン
  • 第五類 將官又はこれに相當する階級の捕虜 七十五スイス?フラン

 もっとも、関係紛爭當事國は、特別協定によって、前記の各類の捕虜に対して支払うべき前払の額を改訂することができる。

 また、前記の第一項に定める額が、抑留國の軍隊の俸給に比べて不當に高額である場合又は何らかの理由により抑留國に重大な支障を與える場合には、抑留國は、前記の支払額の改訂のために捕虜が屬する國と特別協定を締結するまでの間、

  • (a) 前記の第一項に定める額を引き続き捕虜の勘定に貸記しなければならず、
  • (b) 前払の俸給中捕虜の使用に供する額を合理的な額に臨時に制限することができる。但し、その額は、第一類に関しては、抑留國が自國の軍隊の構成員に支給する額よりも低額であってはならない。

 前記の制限の理由は、遅滯なく利益保護國に通知するものとする。

第六十一條〔追加給與〕

 抑留國は、捕虜が屬する國が捕虜に送付する額を捕虜に対する迫加給與として分配することを受諾しなければならない。但し、分配される額が、同一の類の各捕虜について同額であり、當該國に屬する同一の類のすベての捕虜に分配され、且つ、できる限りすみやかに第六十四條の規定に従って各捕虜の勘定に貸記される場合に限る。その追加給與は、抑留國に対し、この條約に基く義務を免除するものではない。

第六十二條〔労働賃金〕

 捕虜に対しては、抑留當局が直接に公正な労働賃金を支払わなければならない。その賃金は、抑留當局が定めるが、いかなる場合にも、一労働日に対し四分の一スイス?フラン未満であってはならない。抑留國は、自國が定めた日給の額を捕虜及び、利益保護國の仲介によって、捕虜が屬する國に通知しなければならない。

 労働賃金は、収容所の管理、営繕又は維持に関連する任務又は熟練労働若しくは半熟練労働を恒常的に割り當てられている捕虜及び捕虜のための宗教上又は醫療上の任務の遂行を要求される捕虜に対し、抑留當局が、同様に支払わなければならない。

 捕虜代表並びにその顧問及び補助者の労働賃金は、酒保の利益で維持する基金から支払わなければならない。その賃金の額は、捕虜代表が定め、且つ、収容所長の承認を得なければならない。前記の基金がない場合には、抑留當局は、これらの捕虜に公正な労働賃金を支払わなければならない。

第六十三條〔賃金の移送〕

 捕虜に対しては、個人的又は集団的に當該捕虜にあてて送付された金銭を受領することを許さなければならない。

 各捕虜は、抑留國が定める範囲內において、次條に規定する自己の勘定の貸方殘高を処分することができるものとし、抑留國は、要請があった支払をしなければならない。捕虜は、また、抑留國が肝要と認める財政上又は通貨上の制限に従うことを條件として、外國へ向けた支払をすることができる。この場合には、抑留國は、捕虜が被扶養者にあてる支払に対して優先権を與えなければならない。

 捕虜は、いかなる場合にも、その屬する國の同意があったときは、次のようにして自國へ向けた支払をすることができる。すなわち、抑留國は、捕虜が屬する國に対し、利益保護國を通じ、捕虜、受領者及び抑留國の通貨で表示した支払額に関するすべての必要な細目を記載した通告書を送付する。この通告書には、當該捕虜が署名し、且つ、収容所長が副署する抑留國は、前記の額を捕虜の勘定に借記し、こうして借記された額は、抑留國が、捕虜が屬する國の勘定に貸記する。

 抑留國は、前記の規定を適用するため、この條約の第五附屬書に掲げるひな型規則を有効に利用することができる。

第六十四條〔捕虜の勘定〕

 抑留國は、各捕虜について、少くとも次の事項を示す勘定を設けなければならない。

  • (1) 捕虜に支払うべき額、捕虜が俸給の前払若しくは労働賃金として得た額又はその他の源泉から得た額、捕虜から取り上げた抑留國の通貨の額及び捕虜から取り上げた金銭でその要請によって抑留國の通貨に両替したものの額
  • (2) 現金その他これに類する形式で捕虜に支払われた額、捕虜のためにその要請によって支払われた額及び前條第三項に基いて振り替えられた額

第六十五條〔勘定の管理〕

 捕虜の勘定に記入された各事項については、當該捕虜又はその代理をする捕虜代表が、副署又はかしら字署名をしなければならない。

 捕虜に対しては、いつでも、その勘定を閲覧し、及びその寫を入手する適當な便益を與えなければならない。その勘定は、利益保護國の代表者が、収容所を訪問した際検査をすることができる。

 捕虜を一収容所から他の収容所に移動する場合には、その捕虜の勘定は、その捕虜とともに移転するものとする。捕虜を一抑留國から他の抑留國に移送する場合には、その捕虜の財産たる金銭で前抑留國の通貨でないものは、その捕虜とともに移転するものとする。その捕虜に対しては、その勘定に貸記されている他のすべての金銭の額について証明を発給しなければならない。

 関係紛爭當事國は、利益保護國を通じて定期的に捕虜の勘定の額を相互に通告するため、協定することができる。

第六十六條〔勘定の清算〕

 捕虜たる身分が解放又は送還によって終了したときは、抑留國は、捕虜たる身分が終了した時における捕虜の貸方殘高を示す証明書で抑留國の権限のある將校が署名したものを捕虜に交付しなければならない。抑留國は、また、捕虜が屬する國に対し、利益保護國を通じ、送還、解放、逃走、死亡その他の事由で捕虜たる身分が終了したすべての捕虜に関するすべての適當な細目及びそれらの捕虜の貸方殘高を示す表を送付しなければならない。その表は、一枚ごとに抑留國の権限のある代表者が証明しなければならない。

 本條の前記の規定は、紛爭當事國間の相互の協定で変更することができる。

 捕虜が屬する國は、捕虜たる身分が終了した時に抑留國から捕虜に支払うべき貸方殘高を當該捕虜に対して決済する責任を負う。

第六十七條〔紛爭當事國間の清算〕

 第六十條に従って捕虜に支給される俸給の前払は、捕虜が屬する國に代ってされる前払と認める。その俸給の前払並びに第六十三條第三項及び第六十八條に基いて當該國が行ったすべての支払は、敵対行為の終了の際、関係國の間の取極の対象としなければならない。

第六十八條〔補償の請求〕

 労働による負傷又はその他の身體障害に関する捕虜の補償の請求は、利益保護國を通じ、捕虜が屬する國に対してしなければならない。抑留國は、第五十四條に従って、いかなる場合にも、負傷又は身體障害について、その性質、それが生じた事情及びそれに與えた醫療上の又は病院における処置に関する細目を示す証明書を當該捕虜に交付するものとする。この証明書には、抑留國の責任のある將校が署名し、醫療の細目は、軍醫が証明するものとする。

 第十八條に基いて抑留國が取り上げた個人用品、金銭及び有価物で送還の際返還されなかったもの並びに捕虜が被った損害で抑留國又はその機関の責に帰すベき事由によると認められるものに関する捕虜の補償の請求も、捕虜が屬する國に対してしなければならない。但し、前記の個人用品で捕虜が捕虜たる身分にある間その使用を必要とするものについては、抑留國がその費用で現物補償しなければならない。抑留國は、いかなる場合にも、前記の個人用品、金銭又は有価物が捕虜に返還されなかつた理由に関する入手可能なすべての情報を示す証明書で責任のある將校が署名したものを捕虜に交付するものとする。この証明書の寫一通は、第百二十三條に定める中央捕虜情報局を通じ、捕虜が屬する國に送付するものとする。

第五部 捕虜と外部との関係

第六十九條〔措置の通知〕

 抑留國は、捕虜がその権力內に陥ったときは、直ちに、捕虜及び、利益保護國を通じ、捕虜が屬する國に対し、この部の規定を実施するために執る措置を通知しなければならない。抑留國は、その措置が後に変更されたときは、その変更についても同様に前記の関係者に通知しなければならない。第七十條〔捕虜通知票〕各捕虜に対しては、その者が、捕虜となった時直ちに、又は収容所(通過収容所を含む。)に到著した後一週間以內に、また、病気になった場合又は病院若しくは他の収容所に移動された場合にもその後一週間以內に、その家族及び第百二十三條に定める中央捕虜情報局に対し、捕虜となった事実、あて名及び健康狀態を通知する通知票を直接に送付することができるようにしなければならない。その通知票は、なるべくこの條約の附屬のひな型と同様の形式のものでなければならない。その通知票は、できる限りすみやかに送付するものとし、いかなる場合にも、遅延することがあってはならない。

第七十一條〔通信〕

 捕虜に対しては、手紙及び葉書を送付し、及び受領することを許さなければならない。抑留國が各捕虜の発送する手紙及び葉書の數を制限することを必要と認めた場合には、その數は、毎月、手紙二通及び葉書(第七十條に定める通知票を除く。)四通より少いものであってはならない。それらの手紙及び葉書は、できる限りこの條約の附屬のひな型と同様の形式のものでなければならない。その他の制限は、抑留國が必要な検閲の実施上有能な翻訳者を充分に得ることができないために翻訳に困難をきたし、従って、當該制限を課することが捕虜の利益であると利益保護國が認める場合に限り、課することができる。捕虜にあてた通信が制限されなければならない場合には、その制限は、通常抑留國の要請に基いて、捕虜が屬する國のみが命ずることができる。前記の手紙及び葉書は、抑留國が用いることができる最もすみやかな方法で送付するものとし、懲戒の理由で、遅延させ、又は留置してはならない。

 長期にわたり家族から消息を得ない捕虜又は家族との間で通常の郵便路線により相互に消息を伝えることができない捕虜及び家族から著しく遠い場所にいる捕虜に対しては、電報を発信することを許さなければならない。その料金は、抑留國における捕虜の勘定に借記し、又は捕虜が処分することができる通貨で支払うものとする。捕虜は、緊急の場合にも、この措置による利益を受けるものとする。

 捕虜の通信には、原則として、母國語で書かなければならない。紛爭當事國は、その他の言語で通信することを許すことができる。

 捕虜の郵便を入れる郵袋は、確実に封印し、且つ、その內容を明示する札を附した上で、名あて郵便局に送付しなければならない。

第七十二條〔救済品の一般原則〕

 捕虜に対しては、特に、食糧、被服、醫療品及び捕虜の必要を満たす宗教、教育又は娯楽用物品(図書、宗教用品、科學用品、試験用紙、楽器、運動具及び捕虜がその研究又は文化活動をすることを可能にする用品を含む。)を內容とする個人又は集団あての荷物を郵便その他の徑路により受領することを許さなければならない。

 それらの荷物は、抑留國に対し、この條約で抑留國に課せられる義務を免除するものではない。

 前記の荷物に対して課することができる唯一の制限は、利益保護國が捕虜自身の利益のために提案する制限又は赤十字國際委員會その他捕虜に援助を與える団體が運送上の異常な混雑を理由として當該団體自身の荷物に関してのみ提案する制限とする。

 個人又は集団あての荷物の発送に関する條件は、必要があるときは、関係國間の特別協定の対象としなければならない。関係國は、いかなる場合にも、捕虜による救済品の受領を遅延させてはならない。図書は、被服又は食糧の荷物の中に入れてはならない。醫療品は、原則として、集団あての荷物として送付しなければならない。

第七十三條〔集団あての救済品〕

 集団あての救済品の受領及び分配の條件に関して関係國間に特別協定がない場合には、この條約に附屬する集団的救済に関する規則を適用しなければならない。

 前記の特別協定は、いかなる場合にも、捕虜代表が捕虜にあてられた集団的救済品を保有し、分配し、及び捕虜の利益となるように処分する権利を制限するものであってはならない。

 前記の特別協定は、また、利益保護國、赤十字國際委員會又は捕虜に援助を與えるその他の団體で集団あての荷物の伝達について責任を負うものの代表者が受取人に対する當該貨物の分配を監督する権利を制限するものであってはならない。

第七十四條〔課徴金、郵便料金の免除〕

 捕虜のためのすべての救済品は、輸入稅、稅関手數料その他の課徴金を免除される。

 捕虜にあてられ、又は捕虜が発送する通信、救済品及び認められた送金で郵便によるものは、直接に送付されると第百二十二條に定める捕虜情報局及び第百二十三條に定める中央捕虜情報局を通じて送付されるとを問わず、差出國、名あて國及び仲介國において郵便料金を免除される。

 捕虜にあてられた救済品が重量その他の理由により郵便で送付することができない場合には、その輸送費は、抑留國の管理の下にあるすべての地域においては、抑留國が負擔しなければならない。この條約のその他の締約國は、それぞれの領域における輸送費を負擔しなければならない。

 関係國間に特別協定がない場合には、前記の救済品の輸送に関連する費用(前記により免除される費用を除く。)は、発送人が負擔しなければならない。

 締約國は、捕虜が発信し、又は捕虜にあてられる電報の料金をできる限り低額にするように努めなければならない。

第七十五條〔特別の輸送手段〕

 軍事行動のため、関係國が第七十條、第七十一條、第七十二條及び第七十七條に定める送付品の輸送を確保する義務を遂行することができなかった場合には、関係利益保護國、赤十字國際委員會又は紛爭當事國が正當に承認したその他の団體は、適當な輸送手段(鉄道車両、自動車、船舶、航空機等)によりその送付品を伝達することを確保するように企畫することができる。このため、締約國は、それらのものに前記の輸送手段を提供することに努め、且つ、特に、必要な安導券を與えて輸送手段の使用を許さなければならない。

 前記の輸送手段は、次のものの輸送のためにも使用することができる。

  • (a) 第百二十三條に定める中央捕虜情報局と第百二十二條に定める各國の捕虜情報局との間で交換される通信、名簿及び報告書
  • (b) 利益保護國、赤十字國際委員會又は捕虜に援助を與えるその他の団體がその代表又は紛爭當事國との間で交換する捕虜に関する通信及び報告書

 前記の規定は、紛爭當事國が希望した場合に他の輸送手段について取極をする権利を制限するものではなく、また、安導券が相互に同意された條件でその輸送手段に関して與えられることを排除するものでもない。

 特別協定がない場合には、輸送手段の使用に要する費用は、それによって利益を得る者の國籍が屬する紛爭當事國が、あん分して負擔しなければならない。

第七十六條〔検閲及び検査〕

 捕虜にあてられ、又は捕虜が発送する通信の検閲は、できる限りすみやかに行わなければならない。その通信は、差出國及び名あて國のみがそれぞれ一回に限り検閲することができる。

 捕虜にあてられた荷物の検査は、その中の物品をそこなう虞のある條件の下で行ってはならない。その検査は、文書又は印刷物の場合を除く外、名あて人又は名あて人が正當に委任した捕虜の立會の下に行わなければならない。捕虜に対する個人又は集団あての荷物の引渡は、検査の困難を理由として遅滯することがあってはならない。

 紛爭當事國が命ずる通信の禁止は、軍事的理由によるものであると政治的理由によるものであるとを問わず、一時的のものでなければならず、その禁止の期間は、できる限り短いものでなければならない。

第七十七條〔法律文書〕

 抑留國は、捕虜にあてられ、又は捕虜が発送する証書、文書及び記録、特に、委任狀及び遺言狀が利益保護國又は第百二十三條に定める中央捕虜情報局を通じて伝達されるように、すべての便益を提供しなければならない。

 抑留國は、いかなる場合にも、前記の書類の作成について捕虜に便益を與えなければならない。特に、抑留國は、捕虜が法律家に依頼することを許さなければならず、また、捕虜の署名の認証のため必要な措置を執らなければならない。

第六部 捕虜と當局との関係

第一章 抑留條件に関する捕虜の苦情

第七十八條〔苦情及び要請〕

 捕虜は、自己を権力內に有する軍當局に対し、抑留條件に関する要請を申し立てる権利を有する。

 捕虜は、また、その抑留條件に関して苦情を申し立てようとする事項に対して利益保護國の代表者の注意を喚起するため、捕虜代表を通じ、又は必要と認めるときは直接に、利益保護國の代表者に対して申入れをする権利を無制限に有する。

 前記の要請及び苦情は、制限してはならず、また、第七十一條に定める通信の割當數の一部を構成するものと認めてはならない。この要請及び苦情は、直ちに伝達しなければならない。この要請及び苦情は、理由がないと認められた場合にも、処罰の理由としてはならない。

 捕虜代表は、利益保護國の代表者に対し、収容所の狀態及び捕虜の要請に関する定期的報告をすることができる。

第二章 捕虜代表

第七十九條〔選挙〕

 捕虜は、捕虜が収容されているすべての場所(將校が収容されている場所を除く。)において、軍當局、利益保護國、赤十字國際委員會及び捕虜を援助するその他の団體に対して捕虜を代表することを委任される捕虜代表を、六箇月ごとに及び欠員を生じたつど、自由に秘密投票で選挙しなければならない。この捕虜代表は、再選されることができる。

 將校及びこれに相當する者の収容所又は混合収容所では、捕虜中の先任將校をその収容所の捕虜代表と認める。將校の収容所では、捕虜代表は、將校により選ばれた一人又は二人以上の顧問によって補助されるものとする。混合収容所では、捕虜代表の補助者は、將校でない捕虜の中から選ばなければならず、また、將校でない捕虜によって選挙されたものでなければならない。

 収容所の管理に関する任務で捕虜が責任を負うものを遂行するため、捕虜の労働収容所には、同一の國籍を有する捕虜たる將校を置かなければならない。これらの將校は、本條第一項に基いて捕虜代表として選挙されることができる。この場合には、捕虜代表の補助者は、將校でない捕虜の中から選ばなければならない。

 選挙された捕虜代表は、すべて、その任務につく前に抑留國の承認を得なければならない。抑留國は、捕虜により選挙された捕虜代表について承認を拒否したときは、その拒否の理由を利益保護國に通知しなければならない。

 捕虜代表は、いかなる場合にも、自己が代表する捕虜と同一の國籍、言語及び慣習の者でなければならない。國籍、言語及び慣習に従って収容所の異なる區畫に収容された捕虜は、こうして、前各項に従って各區畫ごとにそれぞれの捕虜代表を有するものとする。

第八十條〔任務〕

 捕虜代表は、捕虜の肉體的、精神的及び知的福祉のために貢獻しなければならない。

 特に、捕虜がその相互の間で相互扶助の制度を組織することに決定した場合には、この組織は、この條約の他の規定によって捕虜代表に委任される特別の任務とは別に、捕虜代表の権限に屬するものとする。

 捕虜代表は、その任務のみを理由としては、捕虜が犯した罪について責任を負うものではない。

第八十一條〔特権〕

 捕虜代表に対しては、その任務の遂行が他の労働によって一層困難となるときは、他の労働を強制してはならない。

 捕虜代表は、その必要とする補助者を捕虜の中から指名することができる。捕虜代表に対しては、すべての物質的便益、特に、その任務の達成のために必要なある程度の行動の自由(労働分遣所の訪問、需品の受領等)を許さなければならない。

 捕虜代表に対しては、捕虜が抑留されている施設を訪問することを許さなければならない。各捕虜は、その捕虜代表と自由に協議する権利を有する。

 捕虜代表に対しては、また、抑留國の當局、利益保護國及び赤十字國際委員會並びにそれらの代表、混成醫療委員會並びに捕虜を援助する団體と郵便及び電信で通信するためのすべての便益を與えなければならない。労働分遣所の捕虜代表は、主たる収容所の捕虜代表と通信するため、同一の便益を享有する。この通信は、制限してはならず、また、第七十一條に定める割當數の一部を構成するものと認めてはならない。

 移動される捕虜代表に対しては、その事務を後任者に引き継ぐための充分な時間を與えなければならない。

 捕虜代表が解任された場合には、その理由は、利益保護國に通知しなければならない。

第三章 刑罰及び懲戒罰

I 総則

第八十二條〔適用法令〕

 捕虜は、抑留國の軍隊に適用される法律、規則及び命令に服さなければならない。抑留國は、その法律、規則及び命令に対する捕虜の違反行為について司法上又は懲戒上の措置を執ることができる。但し、その手続又は処罰は、本章の規定に反するものであってはならない。

 抑留國の法律は、規則又は命令が、捕虜が行った一定の行為について処罰すベきものと定めている場合において、抑留國の軍隊の構成員が行った同一の行為については処罰すべきものでないときは、その行為については、懲戒罰のみを科することができる。

第八十三條〔懲戒、司法手続〕

 抑留國は、捕虜が行ったと認められる違反行為に対する処罰が司法上又は懲戒上の手続のいずれによるべきかを決定するに當っては、権限のある當局が最大の寛容を示し、且つ、できる限り司法七の措置よりも懲戒上の措置を執ることを確保しなければならない。

第八十四條〔裁判所〕

 捕虜は、軍事裁判のみが裁判することができる。但し、非軍事裁判所が、捕虜が犯したと主張されている當該違反行為と同一の行為に関して抑留國の軍隊の構成員を裁判することが抑留國の現行の法令によって明白に認められている場合は、この限りでない。

 捕虜は、いかなる場合にも、裁判所のいかんを問わず、一般に認められた獨立及び公平についての不可欠な保障を與えない裁判所、特に、その手続が第百五條に定める防ぎょの権利及び手段を被告人に與えない裁判所では、裁判してはならない。

第八十五條〔捕虜となる前の違反行為〕

 捕虜とされる前に行った行為について抑留國の法令に従って訴追された捕虜は、この條約の利益を引き続き享有する。有罪の判決を受けても、同様である。

第八十六條〔一事不再理〕

 捕虜は、同一の行為又は同一の犯罪事実については、重ねて処罰することができない。

第八十七條〔刑罰〕

 抑留國の軍當局及び裁判所は、捕虜に対しては、同一の行為を行った抑留國の軍隊の構成員に関して規定された刑罰以外の刑罰を科してはならない。

 抑留國の裁判所又は當局、刑罰を決定するに當っては、被告人が抑留國の國民ではなくて同國に対し忠誠の義務を負わない事実及び被告人がその意思に関係のない事情によって抑留國の権力內にある事実をできる限り考慮に入れなければならない。前記の裁判所又は當局は、捕虜が訴追された違反行為に関して定める刑罰を自由に軽減することができるものとし、従って、このためには、所定の最も軽い刑罰にかかわりなく刑罰を科することができる。

 個人の行為に関して集団に科する刑罰、肉體に加える刑罰、日光が入らない場所における拘禁及び一般にあらゆる種類の拷問又は殘虐行為は、禁止する。

 抑留國は、捕虜の階級を奪ってはならず、また、捕虜の階級章の著用を妨げてはならない。

第八十八條〔刑罰の執行〕

 懲戒罰又は刑罰に服する捕虜たる將校、下士官及び兵に対しては、同一の罰に関して抑留國の軍隊の同等の階級に屬する構成員に適用される待遇よりもきびしい待遇を與えてはならない。

 女子の捕虜に対しては、抑留國の軍隊の構成員たる女子が同様の違反行為について受けるところよりも、きびしい罰を科してはならず、又はきびしい待遇を罰に服する間與えてはならない。

 女子の捕虜に対しては、いかなる場合にも、抑留國の軍隊の構成員たる男子が同様の違反行為について受けるところよりも、きびしい罰を科してはならず、又はきびしい待遇を罰に服する間與えてはならない。

 捕虜は、懲戒罰又は刑罰に服した後は、他の捕虜と差別して待遇してはならない。

II 懲戒罰

第八十九條〔懲戒罰の形式〕

 捕虜に対して科することができる懲戒罰は、次のものとする。

  • (1) 三十日以內の期間について行う、第六十條及び第六十二條の規定に基いて捕虜が受領すべき前払の俸給及び労働賃金の百分の五十以下の減給
  • (2) この條約で定める待遇以外に與えられている特権の停止
  • (3) 一日につき二時間以內の労役
  • (4) 拘置

 (3)に定める罰は、將校には科さないものとする。

 懲戒罰は、いかなる場合にも、非人道的なもの、殘虐なもの又は捕虜の健康を害するものであってはならない。

第九十條〔懲戒罰の期間〕

 一の懲戒罰の期間は、いかなる場合にも、三十日をこえてはならない。紀律に対する違反行為に関する審問又は懲戒の決定があるまでの間における拘禁の期間は、捕虜に言い渡す本罰に通算しなければならない。

 捕虜が懲戒の決定を受ける場合において、同時に二以上の行為について責任を問われているときでも、それらの行為の間に関連があるかどうかを問わず、前記の三十日の最大限度は、こえてはならない。

 懲戒の言渡と執行との間の期間は、一箇月をこえてはならない。

 捕虜について重ねて懲戒の決定があった場合において、いずれかの懲戒罰の期間が十日以上であるときは、いずれの二の懲戒についても、その執行の間には、少くとも三日の期間を置かなければならない。

第九十一條〔成功した逃走〕

 捕虜の逃走は、次の場合には、成功したものと認める。

  • (1) 捕虜がその屬する國又はその同盟國の軍隊に帰著した場合
  • (2) 捕虜が抑留國又はその同盟國の支配下にある地域を去った場合
  • (3) 捕虜がその屬する國又はその同盟國の國旗を掲げる船舶で抑留國の領水內にあるものに帰著した場合。但し、その船舶が抑留國の支配下にある場合を除く。

 本條の意味における逃走に成功した後に再び捕虜とされた者に対しては、以前の逃走について罰を科してはならない。

第九十二條〔不成功の逃走〕

 逃走を企てた捕虜で第九十一條の意味における逃走に成功する前に再び捕虜とされたものに対しては、その行為が重ねて行われたものであるとないとを問わず、その行為については懲戒罰のみを科することができる。

 再び捕虜とされた者は、権限のある軍當局に遅滯なく引き渡さなければならない。

 第八十八條第四項の規定にかかわらず、成功しなかった逃走の結果として処罰された捕虜は、特別の監視の下に置くことができる。その監視は、捕虜の健康狀態を害するものであってはならず、捕虜収容所內で行われるものでなければならず、また、この條約によって捕虜に與えられる保護のいずれをも排除するものであってはならない。

第九十三條〔関連の違反行為〕

 逃走又は逃走の企図は、その行為が重ねて行われたものであるとないとを問わず、捕虜が逃走中又は逃走の企図中に行った犯罪行為について司法手続による裁判に付されたときに刑を加重する情狀と認めてはならない。

 捕虜が逃走を容易にする意思のみをもって行った違反行為で生命及び身體に対する暴行を伴わないもの、たとえば、公の財産に対して行った違反行為、利得の意思を伴わない盜取、偽造文書の作成又は行使、軍服以外の被服の著用等については、第八十三條に掲げる原則に従って懲戒罰のみを科することができる。

 逃走又は逃走の企図をほう助し、又はそそのかした捕虜に対しては、その行為について懲戒罰のみを科することができる。

第九十四條〔再び捕虜とした旨の通知〕

 逃走した捕虜が再び捕虜とされた場合にはその事実については、第百二十二條に定めるところにより、捕虜が屬する國に通告しなければならない。但し、その逃走が既に通告されているときに限る。

第九十五條〔懲戒決定までの拘禁〕

 紀律に対する違反行為について責任を問われた捕虜は、抑留國の軍隊の構成員が同様の違反行為について責任を問われたとき同様に拘禁される場合又は収容所の秩序及び紀律の維持のために必要とされる場合を除く外、懲戒の決定があるまでの間、拘禁してはならない。

 紀律に対する違反行為についての処分があるまでの間における捕虜の拘禁の期間は、最少限度としなければならず、また、十四日をこえてはならない。

 本章第九十七條及び第九十八條の規定は、紀律に対する違反行為についての処分があるまでの間に拘禁されている捕虜に適用する。

第九十六條〔権限ある當局〕

 紀律に対する違反行為を構成する行為は、直ちに調査しなければならない。

 懲戒罰は、収容所長の資格で懲戒権を有する將校又はその代理をし、若しくはその懲戒権を委任される責任のある將校のみが、言い渡すことができる。但し、裁判所及び上級の軍當局の権限を害するものではない。

 懲戒権は、いかなる場合にも、捕虜に委任され、又は捕虜により行使されてはならない。

 違反行為の責任を問われた捕虜に対しては、懲戒の決定の言渡の前に、責任を問われた違反行為に関する正確な情報を告げ、且つ、當該捕虜が自己の行為を弁明し、及び自己を防ぎょする機會を與えなければならない。その捕虜に対しては、特に、証人の喚問を求めること及び必要があるときは資格のある通訳人に通訳させることを許さなければならない。決定は、當該捕虜及び捕虜代表に対して告知しなければならない。

 懲戒の記録は、収容所長が保存し、且つ、利益保護國の代表者の閲覧に供しなければならない。

第九十七條〔懲戒罰の執行場所〕

 捕虜は、いかなる場合にも、懲治施設(監獄、懲治所、徒刑場等)に移動して懲戒罰に服させてはならない。

 捕虜を懲戒罰に服させるすべての場所は、第二十五條に掲げる衛生上の要件を満たすものでなければならない。懲戒罰に服する捕虜については、第二十九條の規定に従って、清潔な狀態を保つことができるようにしなければならない。

 將校及びこれに相當する者は、下士官又は兵と同一の場所に拘禁してはならない。

 懲戒罰に服する女子の捕虜は、男子の捕虜と分離した場所に拘禁し、且つ、女子の直接の監視の下に置かなければならない。

第九十八條〔重要な保障〕

 懲戒罰として拘禁される捕虜は、拘禁された事実だけでこの條約の規定の適用が必然的に不可能となった場合を除く外、引き続きこの條約の規定の利益を享有する。第七十八條及び第百二十六條の規定の利益は、いかなる場合にも、その捕虜から奪ってはならない。

 懲戒罰に服する捕虜からは、その階級に伴う特権を奪ってはならない。

 懲戒罰に服する捕虜に対しては、一日に少くとも二時間、運動し、及び戸外にあることを許さなければならない。

 それらの捕虜に対して、その請求があったときは、日日の検診を受けることを許さなければならない。それらの捕虜は、その健康狀態により必要とされる治療を受けるものとし、また、必要がある場合には、収容所の病室又は病院に移されるものとする。

 それらの捕虜に対しては、読むこと、書くこと及び信書を発受することを許さなければならない。但し、送付を受けた小包及び金銭は、処置が終了するまでの間、留置することができる。その間は、送付を受けた小包及び金銭は、捕虜代表に委託しなければならず、捕虜代表は、その荷物の中にある変敗しやすい物を病室に引き渡さなければならない。

Ⅲ 司法手続

第九十九條〔一般原則〕

 捕虜は、実行の時に効力があった抑留國の法令又は國際法によって禁止されていなかった行為については、これを裁判に付し、又はこれに刑罰を科してはならない。

 捕虜に対しては、責任を問われた行為について有罪であると認めさせるために精神的又は肉體的強制を加えてはならない。

 捕虜は、防ぎょ方法を提出する機會を與えられ、且つ、資格のある弁護人の援助を受けた後でなければ、これに対して有罪の判決をしてはならない。

第百條〔死刑〕

 捕虜及び利益保護國に対しては、抑留國の法令に基いて死刑を科することができる犯罪行為について、できる限りすみやかに通知しなければならない。

 その他の犯罪行為は、その後は、捕虜が屬する國の同意を得ないでは、死刑を科することができる犯罪行為としてはならない。

 死刑の判決は、第八十七條第二項に従って、被告人が抑留國の國民ではなくて同國に対し忠誠の義務を負わない事実及び被告人がその意思に関係のない事情によって抑留國の権力內にある事実を裁判所が特に留意した後でなければ、捕虜に言い渡してはならない。

第百一條〔死刑執行までの期間〕

 捕虜に対して死刑の判決の言渡があった場合には、その判決は、利益保護國が第百七條に定める詳細な通告を指定のあて先で受領した日から少くとも六箇月の期間が経過する前に執行してはならない。

第百二條〔判決の有効條件〕

 捕虜に対して言い渡された判決は、抑留國の軍隊の構成員の場合と同一の裁判所により同一の手続に従って行われ、且つ、本章の規定が遵守された場合でなければ、効力を有しない。

第百三條〔裁判までの勾留〕

 捕虜に関する司法上の取調は、事情が許す限りすみやかに、且つ、裁判ができる限りすみやかに開始されるように、行わなければならない。捕虜は、抑留國の軍隊の構成員が同様の犯罪行為について責任を問われれば勾留される場合又は國の安全上その勾留を必要とする場合を除く外、裁判があるまでの間、勾留してはならない。いかなる場合にも、この勾留の期間は、三箇月をこえてはならない。

 裁判があるまでの間に捕虜が勾留された期間は、當該捕虜に科する拘禁の本刑に通算しなければならず、また、刑の決定に當って考慮に入れなければならない。

 本章第九十七條及び第九十八條の規定は、裁判があるまでの間において勾留される捕虜に適用する。

第百四條〔手続の通知〕

 抑留國は、捕虜について司法手続を開始することに決定した場合には、利益保護國に対し、できる限りすみやかに、且つ、少くとも裁判の開始の三週間前に、その旨を通知しなければならない。この三週間の期間は、その通知が、利益保護國があらかじめ抑留國に対して指定したあて先において利益保護國に到達した日から起算する。

 前記の通知書には、次の事項を掲げなければならない。

  • (1) 捕虜の氏名、階級、軍の番號、連隊の番號、個人番號又は登録番號、生年月日及び職業
  • (2) 抑留又は勾留の場所
  • (3) 捕虜に関する公訴事実の細目及び適用される法令の規定
  • (4) 事件を裁判する裁判所並びに裁判の開始の期日及び場所

 抑留國は、捕虜代表に対しても同一の通知をしなければならない。

 利益保護國、當該捕虜及び関係のある捕虜代表が裁判の開始の少くとも三週間前に前記の通知を受領した旨の証拠が裁判の開始に當って提出されなかった場合には、裁判は、開始してはならず、延期しなければならない。

第百五條〔防御の権利〕

 捕虜は、同僚の捕虜の一人に補佐を受け、防ぎょのため資格のある弁護人を選任し、証人の喚問を求め、及び必要と認めるときは有能な通訳人に通訳をさせる権利を有する。抑留國は、捕虜に対し、裁判の開始前の適當な時期に、これらの権利を有する旨を告げなければならない。

 利益保護國は、捕虜が弁護人を選任しなかった場合には、捕虜に弁護人を附さなければならない。このため、利益保護國には、少くとも一週間の猶予期間を與えなければならない。抑留國は、利益保護國の請求があったときは、これに弁護人たる資格のある者の名簿を交付しなければならない。抑留國は、捕虜及び利益保護國が弁護人を選任しなかった場合には、防ぎょに當らせるため、資格のある弁護人を指名しなければならない。

 捕虜の防ぎょに當る弁護人に対しては、被告人の防ぎょの準備をさせるため、裁判の開始前に少くとも二週間の猶予期間を與え、及び必要な便益を與えなければならない。この弁護人は、特に、自由に被告人を訪問し、且つ、立會人なしで被告人と接見することができる。この弁護人は、また防ぎょのために証人(捕虜を含む。)と協議することができる。この弁護人は、不服申立又は請願の期間が満了するまでの間、前記の便益を享有する。

 捕虜に関する起訴狀及び抑留國の軍隊に適用される法令に従って通常被告人に送達される書類は、捕虜が理解する言語で記載して、裁判の開始前に充分に早く被告人たる捕虜に送達しなければならない。捕虜の防ぎょに當る弁護人に対しても、同一の條件で同一の送達をしなければならない。

 利益保護國の代表者は、事件の裁判に立ち會う権利を有する。但し、例外的に國の安全のため裁判が非公開で行われる場合は、この限りでない。この場合には、抑留國は、利益保護國にその旨を通知しなければならない。

第百六條〔不服申立〕

 各捕虜は、自己について言い渡された判決に関しては、抑留國の軍隊の構成員と同様に、判決の破棄若しくは訂正又は再審を請求するため不服を申し立て、又は請願をする権利を有する。その捕虜に対しては、不服申立又は請願の権利及びこれを行使することができる期間について完全に告げなければならない。

第百七條〔判決の通知〕

 捕虜について言い渡された判決は、その概要の通知書により、直ちに利益保護國に対して通知しなければならない。その通知書には、捕虜が判決の破棄若しくは訂正又は再審を請求するため不服を申し立て、又は請願をする権利を有するかどうかをも記載しなければならない。その通知書は、関係のある捕虜代表に対しても交付しなければならない。その通知書は、捕虜が出頭しないで判決が言い渡されたときは、被告人たる捕虜に対しても、當該捕虜が理解する言語で記載して交付しなければならない。抑留國は、また、利益保護國に対し、不服申立又は請願の権利を行使するかどうかについての捕虜の決定を直ちに通知しなければならない。

 更に、捕虜に対する有罪の判決が確定した場合及び捕虜に対し第一審判決で死刑の言渡があった場合には、抑留國は、利益保護國に対し、次の事項を記載する詳細な通知書をできる限りすみやかに送付しなければならない。

  • (1) 事実認定及び判決の正確な本文
  • (2) 予備的な取調及び裁判に関する概要の報告で特に訴追及び防ぎょの要點を明示するもの
  • (3) 必要がある場合には、刑を執行する営造物

 前各號に定める通知は、利益保護國があらかじめ抑留國に通知したあて名にあてて利益保護國に送付しなければならない。

第百八條〔刑の執行、執行規則〕

 適法に確定した有罪の判決により捕虜に対して言い渡した刑は、抑留國の軍隊の構成員の場合と同一の営造物において同一の條件で執行しなければならない。この條件は、いかなる場合にも、衛生上及び人道上の要件を満たすものでなければならない。

 前記の刑を言い渡された女子の捕虜は、分離した場所に拘禁し、且つ、女子の監視の下に置かなければならない。

 自由刑を言い渡された捕虜は、いかなる場合にも、この條約の第七十八條及び第百二十六條の規定による利益を引き続いて享有する。更に、それらの捕虜は、通信を発受し、毎月少くとも一個の救済小包を受領し、規則的に戸外で運動し、並びにその健康狀態により必要とされる醫療及び希望する宗教上の援助を受けることを許されるものとする。それらの捕虜に科せられる刑罰は、第八十七條第三項の規定に従うものでなければならない。

第四編 捕虜たる身分の終了

第一部 直接送還及び中立國における入院

第百九條〔一般的観察〕

 本條第三項の規定を留保して、紛爭當事國は、重傷及び重病の捕虜を、その數及び階級のいかんを問わず、輸送に適する狀態になるまで治療した後次條第一項に従って本國に送還しなければならない。

 紛爭當事國は、敵対行為の期間を通じて、関係中立國の協力により、次條第二項に掲げる傷者又は病者たる捕虜の中立國における入院について措置を執ることに努めなければならない。更に、紛爭當事國は、長期間にわたり捕虜たる身分にあった健康な捕虜の直接送還又は中立國における抑留について協定を締結することができる。

 本條第一項に基いて送還の対象となる傷者又は病者たる捕虜は、敵対行為の期間中は、その意思に反して送還してはならない。

第百十條〔送還及び入院〕

 次の者は、直接に送還しなければならない。

  • (1) 不治の傷者及び病者で、精神的又は肉體的機能が著しく減退したと認められるもの
  • (2) 一年以內に回復する見込がないと醫學的に診斷される傷者及び病者で、その狀態が療養を必要としており、且つ、精神的又は肉體的機能が著しく減退したと認められるもの
  • (3) 回復した傷者及び病者で、精神的又は肉體的機能が著しく、且つ、永久的に減退したと認められるもの

 次の者は、中立國において入院させることができる。

  • (1) 負傷又は発病の日から一年以內に回復すると予想される傷者又は病者で、中立國で療養すれば一層確実且つ迅速に回復すると認められるもの
  • (2) 引き続き捕虜たる身分にあれば精神又は肉體の健康に著しく危険があると醫學的に診斷される捕虜で、中立國で入院すればこの危険が除かれると認められるもの

 中立國で入院した捕虜が送還されるために満たすべき條件及びそれらの捕虜の地位は、関係國間の協定で定めなければならない。一般に中立國で入院した捕虜で次の部類に屬するものは、送還しなければならない。

  • (1) 健康狀態が直接送還について定めた條件を満たす程度に悪化した者
  • (2) 精神的又は肉體的機能が療養後も著しく害されている者

 直接送還又は中立國における入院の理由となる障害又は疾病の種類を決定するための特別協定が関係紛爭當事國間に締結されていない場合には、それらの種類は、この條約に附屬する傷者及び病者たる捕虜の直接送還及び中立國における入院に関するひな型協定並びに混成醫療委員會に関する規則に定める原則に従って定めなければならない。

第百十一條〔中立國における抑留〕

 抑留國及び捕虜が屬する國並びにその二國が合意した中立國は、敵対行為が終了するまでの間その中立國の領域內に捕虜を抑留することができるようにする協定の締結に努めなければならない。

第百十二條〔混成醫療委員會〕

 敵対行為が生じたときは、傷者及び病者たる捕虜を診察し、並びにその捕虜に関して適當なすべての決定をさせるため、混成醫療委員會を任命しなければならない。混成醫療委員會の任命、任務及び活動については、この條約に附屬する規則で定めるところによる。

 もっとも、抑留國の醫療當局が明白に重傷又は重病であると認めた捕虜は、混成醫療委員會の診察を要しないで送還することができる。

第百十三條〔診療を受ける権利〕

 抑留國の醫療當局が指定した捕虜の外、次の部類に屬する傷者又は病者たる捕虜は、前條に定める混成醫療委員會の診察を受ける権利を有する。

  • (1) 同一の國籍を有する醫師又は當該捕虜が屬する國の同盟國たる紛爭當事國の國民である醫師で収容所內でその任務を行うものが指定した傷者及び病者
  • (2) 捕虜代表が指定した傷者及び病者
  • (3) その屬する國又は捕虜に援助を與える団體でその國が正當に承認したものにより指定された傷者及び病者

 もっとも、前記の三部類の一に屬しない捕虜も、それらの部類に屬する者の診察後は、混成醫療委員會の診察を受けることができる。

 混成醫療委員會の診察を受ける捕虜と同一の國籍を有する醫師及び捕虜代表に対しては、その診察に立ち會うことを許さなければならない。

第百十四條〔災害を受けた捕虜〕

 災害を被った捕虜は、故意に傷害を受けた場合を除く外、送還又は中立國における入院に関してこの條約の規定の利益を享有する。

第百十五條〔判決に服している捕虜〕

 懲戒罰を科せられている捕虜で送還又は中立國における入院の條件に適合するものは、その捕虜がその罰を受け終っていないことを理由として抑留して置いてはならない。

 訴追され、又は有罪の判決を言い渡された捕虜で送還又は中立國における入院を指定されたものは、抑留國が同意したときは、司法手続又は刑の執行を終る前の送還又は中立國における入院の利益を享有する。

 紛爭當事國は、司法手続又は刑の執行を終るまでの間抑留される捕虜の氏名を相互に通知しなければならない。

第百十六條〔送還の費用〕

 捕虜の送還又は中立國への移送の費用は、抑留國の國境からは、捕虜が屬する國が負擔しなければならない。

第百十七條〔送還後の活動〕

 送還された者は、現役の軍務に服させてはならない。

第二部 敵対行為の終了の際における捕虜の解放及び送還

第百十八條〔解放及び送還〕

 捕虜は、実際の敵対行為が終了した後遅滯なく解放し、且つ、送還しなければならない。

 このための規定が敵対行為を終了するために紛爭當事國間で締結した協定中にない場合又はそのような協定がない場合には、各抑留國は、前項に定める原則に従って、遅滯なく送還の計畫を自ら作成し、且つ、実施しなければならない。

 前記のいずれの場合にも、採択した措置は、捕虜に知らせなければならない。

 捕虜の送還の費用は、いかなる場合にも、抑留國及び捕虜が屬する國に公平に割り當てなければならない。この割當は、次の基礎に基いて行うものとする。

  • (a) 両國が隣接國であるときは、捕虜が屬する國は、抑留國の國境からの送還の費用を負擔しなければならない。
  • (b) 両國が隣接國でないときは、抑留國は、自國の國境に至るまで又は捕虜が屬する國の領域に最も近い自國の乗船港に至るまでの自國の領域內における捕虜の輸送の費用を負擔しなければならない。関係國は、その他の送還の費用を公平に割り當てるために相互に協定しなければならない。この協定の締結は、いかなる場合にも、捕虜の送還を遅延させる理由としてはならない。

第百十九條〔手続の細部〕

 送還は、第百十八條及び次項以下の規定を考慮して、捕虜の移動についてこの條約の第四十六條から第四十八條までに定める條件と同様の條件で、実施しなければならない。

 送還に當っては、第十八條の規定に基いて捕虜から取り上げた有価物及び抑留國の通貨に両替されなかった外國通貨は、捕虜に返還しなければならない。理由のいかんを問わず送還に當って捕虜に返還されなかった有価物及び外國通貨は、第百二十二條に基いて設置される捕虜情報局に引き渡さなければならない。

 捕虜は、その個人用品並びに受領した通信及び小包を攜帯することを許される。それらの物品の重量は、送還の條件により必要とされるときは、各捕虜が攜帯することができる適當な重量に制限することができる。各捕虜は、いかなる場合にも、少くとも二十五キログラムの物品を攜帯することを許される。

 送還された捕虜のその他の個人用品は、抑留國が保管しなければならない。それらの個人用品は、抑留國が、捕虜が屬する國との間で輸送條件及び輸送費用の支払を定める協定を締結した場合には、直ちに捕虜に送付しなければならない。

 訴追することができる違反行為についての刑事訴訟手続がその者について進行中の捕虜は、司法手続及び必要があるときは刑の執行を終るまでの間、抑留して置くことができる。訴追することができる違反行為について既に有罪の判決を受けた捕虜についても、同様とする。

 紛爭當事國は、司法手続又は刑の執行を終るまでの間抑留して置く捕虜の氏名を相互に通知しなければならない。

 紛爭當事國は、離散した捕虜を捜索し、且つ、できる限り短期間內に送還することを確保するため、協定で委員會を設置しなければならない。

第三部 捕虜の死亡

第百二十條〔遺言書、死亡証明書〕

 捕虜の遺言書は、その本國法で必要とされる要件を満たすように作成しなければならない。本國は、この點に関する要件を抑留國に通知するために必要な措置を執るものとする。遺言書は、捕虜の要請があった場合及び捕虜の死亡後はあらゆる場合に、利益保護國に遅滯なく送付し、その認証謄本は、中央捕虜情報局に送付しなければならない。

 捕虜として死亡したすべての者については、第百二十二條に従って設置される捕虜情報局に対し、できる限りすみやかに、この條約に附屬するひな型に合致する死亡証明書又は責任のある將校が認証した表を送付しなければならない。その証明書又は認証した表には、第十七條第三項に掲げる身分証明書の細目、死亡の?年月日及び場所、死因、埋葬の年月日及び場所並びに墓を識別するために必要なすべての明細を記載しなければならない。

 捕虜の土葬又は火葬は、死亡を確認すること、報告書の作成を可能にすること及び必要があるときは死者を識別することを目的とする死體の醫學的検査の後に行わなければならない。

 抑留當局は、捕虜たる身分にある間に死亡した捕虜ができる限りその屬する宗教の儀式に従って丁重に埋葬されること並びにその墓が尊重され、適當に維持され、及びいつでも見出されるように標示されることを確保しなければならない。死亡した捕虜で同一の國に屬したものは、できる限り同じ場所に埋葬しなければならない。

 死亡した捕虜は、避けがたい事情によって共同の墓を使用する必要がある場合を除く外、各別の墓に埋葬しなければならない。その死體は、衛生上絶対に必要とされる場合、死者の宗教に基く場合又は本人の明示的な希望による場合に限り、火葬に付することができる。火葬に付した場合には、捕虜の死亡証明書に火葬の事実及び理由を記載しなければならない。

 埋葬及び墓に関するすべての明細は、墓をいつでも見出すことができるように、抑留國が設置する墳墓登録機関に記録しなければならない。墓の表及び墓地その他の場所に埋葬された捕虜に関する明細書は、その捕虜が屬した國に送付しなければならない。それらの墓を管理し、及び死體のその後の移動を記録する責任は、その地域を支配する國がこの條約の締約國である場合には、その國が負う。本項の規定は、本國の希望に従ってその遺骨が適當に処分されるまでの間、墳墓登録機関が保管する遺骨についても、適用する。

第百二十一條〔特別の場合の死亡〕

 捕虜の死亡又は重大な傷害で衛兵、他の捕虜その他の者に起因し、又は起因した疑があるもの及び捕虜の原因不明の死亡については、抑留國は、直ちに公の調査を行わなければならない。

 前記の事項に関する通知は、直ちに利益保護國に與えなければならない。証人、特に、捕虜たる証人からは、供述を求め、それからの供述を含む報告書を利益保護國に送付しなければならない。

第五編 捕虜に関する情報局及び救済団體

第百二十二條〔情報局〕

 各紛爭當事國は、紛爭の開始の際及び占領のあらゆる場合に、その権力內にある捕虜に関する公の情報局を設置しなければならない。第四條に掲げる部類の一に屬する者を領域內に収容した中立國又は非交戦國は、それらの者に関して同一の措置を執らなければならない。それらの國は、捕虜情報局に対してその能率的な運営のため必要な建物、設備及び職員を提供することを確保しなければならない。それらの國は、この條約中の捕虜の労働に関する部に定める條件に基いて、捕虜情報局で捕虜を使用することができる。

 各紛爭當事國は、その権力內に陥った第四條に掲げる部類の一に屬する敵人に関し、本條第四項、第五項及び第六項に掲げる情報をできる限りすみやかに自國の捕虜情報局に提供しなければならない。中立國又は非交戦國は、その領域內に収容した前記の部類に屬する者に関し、同様の措置を執らなければならない。

 捕虜情報局は、利益保護國及び第百二十三條に定める中央捕虜情報局の仲介により、関係國に対してその情報を最もすみやかな方法で直ちに通知しなければならない。

 その情報は、関係のある近親者にすみやかに了知させることを可能にするものでなければならない。第十七條の規定を留保して、その情報は、捕虜情報局にとって入手可能である限り、各捕虜について、氏名、階級、軍の番號、連隊の番號、個人番號又は登録番號、出生地及び生年月日、その屬する國、父の名及び母の舊姓、通知を受ける者の氏名及び住所並びに捕虜に対する通信を送付すべきあて名を含むものでなければならない。

 捕虜情報局は、捕虜の移動、解放、送還、逃走、入院及び死亡に関する情報を各種の機関から得て、その情報を前記の第三項に定める方法で通知しなければならない。

 同様に、重病又は重傷の捕虜の健康狀態に関する情報も、定期的に、可能なときは、毎週、提供しなければならない。

 捕虜情報局は、また、捕虜(捕虜たる身分にある間に死亡した者を含む。)に関するすべての問合せに答える責任を負う。捕虜情報局は、情報を求められた場合において、その情報を有しないときは、それを入手するために必要な調査を行うものとする。

 捕虜情報局のすべての通知書は、署名又は押印によって認証しなければならない。

 捕虜情報局は、更に、送還され、若しくは解放された捕虜又は逃走し、若しくは死亡した捕虜が殘したすべての個人的な有価物(抑留國の通貨以外の通貨及び近親者にとって重要な書類を含む。)を取り集めて関係國に送付しなければならない。捕虜情報局は、それらの有価物を封印袋で送付しなければならない。その封印袋には、それらの有価物を所持していた者を識別するための明確且つ完全な明細書及び內容の完全な目録を附さなければならない。前記の捕虜のその他の個人用品は、関係紛爭當事國間に締結される取極に従って送付しなければならない。

第百二十三條〔中央捕虜情報局〕

 中央捕虜情報局は、中立國に設置する。赤十字國際委員會は、必要と認める場合には、関係國に対し、中央捕虜情報局を組織することを提案しなければならない。

 中央捕虜情報局の任務は、公的又は私的徑路で入手することができる捕虜に関するすべての情報を収集し、及び捕虜の本國又は捕虜が屬する國にその情報をできる限りすみやかに伝達することとする。中央捕虜情報局は、この伝達については、紛爭當事國からすべての便益を與えられるものとする。

 締約國、特に、その國民が中央捕虜情報局の役務の利益を享有する國は、中央捕虜情報局に対し、その必要とする財政的援助を提供するように要請されるものとする。

 前記の規定は、赤十字國際委員會又は第百二十五條に定める救済団體の人道的活動を制限するものと解してはならない。

第百二十四條〔料金の減免〕

 各國の捕虜情報局及び中央捕虜情報局は、郵便料金の免除及び第七十四條に定めるすべての免除を受けるものとし、更に、できる限り電報料金の免除又は少くともその著しい減額を受けるものとする。

第百二十五條〔救済団體〕

 抑留國は、その安全を保障し、又はその他合理的な必要を満たすために肝要であると認める措置を留保して、宗教団體、救済団體その他捕虜に援助を與える団體の代表者及びその正當な委任を受けた代理人に対し、捕虜の訪問、出所いかんを問わず宗教的、教育的又は娯楽的目的に充てられる救済用の需品及び物資の捕虜に対する分配並びに収容所內における捕虜の余暇の利用の援助に関してすべての必要な便益を與えなければならない。前記の団體は、抑留國の領域內にも、また、その他の國にも設立することができる。また、前記の団體には、國際的性質をもたせることができる。

 抑留國は、代表が抑留國の領域內で抑留國の監督の下に任務を行うことを許される団體の數を制限することができる。但し、その制限は、すべての捕虜に対する充分な救済の効果的な実施を妨げないものでなければならない。

 この分野における赤十字國際委員會の特別の地位は、常に、認め、且つ、尊重しなければならない。

 前記の目的に充てられる需品又は物資が捕虜に交付されたときは、直ちに又は交付の後短期間內に、捕虜代表が署名した各送付品の受領証を、その送付品を発送した救済団體その他の団體に送付しなければならない。同時に、捕虜の保護について責任を負う當局は、その送付品の受領証を送付しなければならない。

第六編 條約の実施

第一部 総則

第百二十六條〔監視〕

 利益保護國の代表者又は代表は、捕虜がいるすべての場所、特に、収容、拘禁及び労働の場所に行くことを許されるものとし、且つ、捕虜が使用するすべての施設に出入することができるものとする。それらの者は、また、移動中の捕虜の出発、通過又は到著の場所に行くことを許される。それらの者は、立會人なしで、直接に又は通訳人を通じて、捕虜に、特に、捕虜代表と會見することができる。

 利益保護國の代表者及び代表は、訪問する場所を自由に選定することができる。その訪問の期間及び回數は、制限してはならない。訪問は、絶対的な軍事上の必要を理由とする例外的且つ一時的な措置として行われる場合を除く外、禁止されないものとする。

 抑留國及び前記の訪問を受ける捕虜が屬する國は、必要がある場合には、それらの捕虜の同國人が訪問に參加することに合意することができる。

 赤十字國際委員會の代表も、同一の特権を享有する。その代表の任命は、訪問を受ける捕虜を抑留している國の承認を必要とする。

第百二十七條〔條約の普及〕

 締約國は、この條約の原則を自國のすべての軍隊及び住民に知らせるため、平時であると戦時であるとを問わず、自國においてこの條約の本文をできる限り普及させること、特に、軍事教育及びできれば非軍事教育の課目中にこの條約の研究を含ませることを約束する。

 戦時において捕虜について責任を負う軍當局その他の當局は、この條約の本文を所持し、及び同條約の規定について特別の教育を受けなければならない。

第百二十八條〔訳文、適用法令〕

 (第一條約の第四十八條と同じ。)

第百二十九條〔罰則〕

 (第一條約の第四十九條と同じ。)

第百三十條〔重大な違反行為〕

 前條にいう重大な違反行為とは、この條約が保護する人又は物に対して行われる次の行為、すなわち、殺人、拷問若しくは非人道的待遇(生物學的実験を含む。}、身體若しくは健康に対して故意に重い苦痛を與え、若しくは重大な傷害を加えること、捕虜を強制して敵國の軍隊で服務させること又はこの條約に定める公正な正式の裁判を受ける権利を奪うことをいう。

第百三十一條〔締約國の責任〕

 (第一條約の第五十一條と同じ。)

第百三十二條〔調査手続〕

 (第一條約の第五十二條と同じ。)

第百三十三條〔用語〕

 (第一條約の第五十五條と同じ。)

第百三十四條〔舊條約との関係〕

 この條約は、締約國間の関係においては、千九百二十九年七月二十七日の條約に代るものとする。

第百三十五條〔ヘーグ條約との関係〕

 千八百九十九年七月二十九日又は千九百七年十月十八日の陸戦の法規及び慣例に関するヘーグ條約によって拘束されている國でこの條約の締約國であるものの間の関係においては、この條約は、それらのヘーグ條約に附屬する規則の第二章を補完するものとする。

第百三十六條〔署名〕

 本日の日付を有するこの條約は、千九百四十九年四月二十一日にジュネーヴで開かれた會議に代表者を出した國及び同會議に代表者を出さなかった千九百二十九年七月二十七日の條約の締約國に対し、千九百五十年二月十二日までその署名のため開放される。

第百三十七條〔批準〕

 (第一條約の第五十七條と同じ。)

第百三十八條〔効力の発生〕

 (第一條約の第五十八條と同じ。)

第百三十九條〔加入〕

 (第一條約の第五十九條と同じ。)

第百四十條〔加入の通告〕

 (第一條約の第六十條と同じ。)

第百四十一條〔直接の効果〕

 (第一條約の第六十一條と同じ。)

第百四十二條〔廃棄〕

 (第一條約の第六十三條と同じ。)

第百四十三條〔國際連合への登録〕

 (第一條約の第六十四條と同じ。)

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