海上にある軍隊の傷者、病者及び難船者の狀態の改善に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ條約(第二條約)

昭和二十八年十月二十一日
條約第二十四號

第一章 総則

第一條〔條約の尊重〕

 (第一條約の第一條と同じ。)

第二條〔條約の適用〕

 (第一條約の第二條と同じ。)

第三條〔國際的性質を有しない紛爭〕

 (第一條約の第三條と同じ。)

第四條〔適用の範囲〕

 紛爭當事國の陸軍と海軍との間の敵対行為の場合には、この條約の規定は、船內の軍隊にのみ適用する。

 上陸した軍隊は、直ちに、戦地にある軍隊の傷者及び病者の狀態の改善に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ條約の規定の適用を受けるものとする。

第五條〔中立國による適用〕

 中立國は、その領域內に収容し、又は抑留した紛爭當事國の軍隊の傷者、病者、難船者、衛生要員及び宗教要員並びにその領域內に収容した死者に対し、この條約の規定を準用しなければならない。

第六條〔特別協定〕

 締約國は、第十條、第十八條、第三十一條、第三十八條、第三十九條、第四十條、第四十三條及び第五十三條に明文で規定する協定の外、別個に規定を設けることを適當と認めるすべての事項について、他の特別協定を締結することができる。いかなる特別協定も、この條約で定める傷者、病者、難船者、衛生要員及び宗教要員の地位に不利な影響を及ぼし、又はこの條約でそれらの者に與える権利を制限するものであってはならない。

 傷者、病者、難船者、衛生要員及び宗教要員は、この條約の適用を受ける間は、前記の協定の利益を引き続き享有する。但し、それらの協定に反対の明文規定がある場合又は紛爭當事國の一方若しくは他方がそれらの者について一層有利な措置を執った場合は、この限りでない。

第七條〔権利の不放棄〕

 (第一條約の第七條と同じ。)

第八條〔利益保護國〕

 (第一條約の第八條と同じ。)

第九條〔赤十字國際委員會の活動〕

 (第一條約の第九條と同じ。)

第十條〔利益保護國の代理〕

 (第一條約の第十條と同じ。)

第十一條〔調停手続〕

 (第一條約の第十一條と同じ。)

第二章 傷者、病者及び難船者

第十二條〔保護及び看護〕

 次條に掲げる軍隊の構成員及びその他の者で、海上にあり、且つ、傷者、病者又は難船者であるものは、すべての場合において、尊重し、且つ、保護しなければならない。この場合において、「難船」とは、原因のいかんを問わず、あらゆる難船をいい、航空機による又は航空機からの海上への不時著を含むものとする。

 それらの者をその権力內に有する紛爭當事國は、それらの者を性別、人種、國籍、宗教、政治的意見又はその他類似の基準による差別をしないで人道的に待遇し、且つ、看護しなければならない。それらの者の生命又は身體に対する暴行は、厳重に禁止する。特に、それらの者は、殺害し、みな殺しにし、拷問に付し、又は生物學的実験に供してはならない。それらの者は、治療及び看護をしないで故意に遺棄してはならず、また、伝染又は感染の危険にさらしてはならない。

 治療の順序における優先権は、緊急な醫療上の理由がある場合に限り、認められる。

 女子は、女性に対して払うべきすべての考慮をもって待遇しなければならない。

第十三條〔保護される者〕

 この條約は、海上にある傷者、病者及び難船者で次の部類に屬するものに適用する。

  • (1) 紛爭當事國の軍隊の構成員及びその軍隊の一部をなす民兵隊又は義勇隊の構成員
  • (2) 紛爭當事國に屬するその他の民兵隊及び義勇隊の構成員(組織的抵抗運動団體の構成員を含む。)で、その領域が占領されているかどうかを問わず、その領域の內外で行動するもの。但し、それらの民兵隊又は義勇隊(組織的抵抗運動団體を含む。)は、次の條件を満たすものでなければならない。
  •  (a) 部下について責任を負う一人の者が指揮していること。
  •  (b) 遠方から認識することができる固著の特殊標章を有すること。
  •  (c) 公然と武器を攜行していること。
  •  (d) 戦爭の法規及び慣例に従って行動していること。
  • (3) 正規の軍隊の構成員で、抑留國が承認していない政府又は當局に忠誠を誓ったもの
  • (4) 実際には軍隊の構成員でないが軍隊に隨伴する者、たとえば、文民たる軍用航空機の乗組員、従軍記者、需品供給者、労務隊員又は軍隊の福利機関の構成員等。但し、それらの者がその隨伴する軍隊の認可を受けている場合に限る。
  • (5) 紛爭當事國の商船の乗組員(船長、水先人及び見習員を含む。)及び民間航空機の乗組員で、國際法の他のいかなる規定によっても一層有利な待遇の利益を享有することがないもの
  • (6) 占領されていない領域の住民で、敵の接近に當り、正規の軍隊を編成する時日がなく、侵入する軍隊に抵抗するために自発的に武器を執るもの。但し、それらの者が公然と武器を攜行し、且つ、戦爭の法規及び慣例を尊重する場合に限る。

第十四條〔交戦國への引渡〕

 一交戦國のすべての軍艦は、船舶又は舟艇の國籍のいかんを問わず、軍用病院船、救済団體又は私人に屬する病院船、商船、ヨット及びその他の舟艇內の傷者、病者及び難船者の引渡を要求する権利を有する。但し、傷者及び病者が移動することができる狀態にあり、且つ、當該軍鑑が必要な醫療上の手當を行うのに充分な便益を提供することができる場合に限る。

第十五條〔中立國の軍艦に収容された傷者〕

 傷者、病者又は難船者が中立國の軍艦又は軍用航空機に収容された場合において、國際法上の要求があるときは、それらの者が軍事行動に再び參加することができないようにしなければならない。

第十六條〔敵の権力內にある傷者〕

 第十二條の規定に従うことを條件として、交職國の傷者、病者及び難船者で敵の権力內に陥ったものは、捕虜となるものとし、捕虜に関する國際法の規定が、それらの者に適用される。それらの者を捕虜とした者は、それらの捕虜を抑留すべきか又は自國の港、中立國の港若しくは敵國の領域內の港に送るべきかを事情に応じて決定することができる。この最後の場合には、本國に送還された捕虜は、戦爭の継続中、軍務に服してはならない。

第十七條〔中立國の港に上陸した傷者〕

 現地當局の同意を得て中立國の港に上陸する傷者、病者及び難船者は、國際法上の要求があるときは、中立國と交戦國との間に反対の取極がない限り、軍事行動に再び參加することができないように中立國が監視しなければならない。

 それらの者の入院及び抑留の費用は、傷者、病者及び難船者が屬する國が負擔する。

第十八條〔交戦後の死傷者の捜索〕

 紛爭當事國は、交戦の後には、傷者、病者及び難船者を捜索し、及び収容し、それらの者をりゃく奪及び虐待から保護し、それらの者に対する充分な看護を確保し、並びに死者を捜索し、及び死者がはく奪を受けることを防止するため、遅滯なくすべての可能な措置を執らなければならない。

 事情が許すときはいつでも、攻囲され、又は包囲された地域にある傷者及び病者の海路による収容並びにそれらの地域へ向う衛生要員、宗教要員及び衛生材料の通過に関し、紛爭當事國相互間で現地取極を結ぶことができる。

第十九條〔記録及び情報の送付〕

 紛爭當事國は、その権力內に陥った敵國の傷者、病者、難船者及び死者に関し、それらの者の識別に役立つ明細をできる限りすみやかに記録しなければならない。それらの記録は、できる限り次の事項を含むものでなければならない。

  • (a) その者が屬する國
  • (b) 軍の名稱、連隊の名稱、個人番號又は登録番號
  • (c) 姓
  • (d) 名
  • (e) 生年月日
  • (f) 身分証明書又は識別票に掲げるその他の明細
  • (g) 捕虜とされた年月日及び場所又は死亡の年月日及び場所
  • (h) 負傷若しくは疾病に関する明細又は死亡の原因

 前記の情報は、捕虜の待遇に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ條約第百二十二條に掲げる捕虜情報局にできる限りすみやかに送付しなければならない。捕虜情報局は、利益保護國及び中央捕虜情報局の仲介により、それらの者が屬する國にその情報を伝達しなければならない。

 紛爭當事國は、死亡証明書又は正當に認証された死者名簿を作成し、且つ、捕虜情報局を通じて相互にこれを送付しなければならない。紛爭當事國は、同様に、死者について発見された複式の識別票の一片又は、単式の識別票の場合には、識別票、遺書その他近親者にとって重要な書類、金銭及び一般に內在的価値又は感情的価値のあるすべての物品を取り集め、且つ、捕虜情報局を通じて相互にこれらを送付しなければならない。それらの物品は、所屬不明の物品とともに封印して小包で送らなければならない。それらの小包には、死亡した所有者の識別に必要なすべての明細を記載した記述書及び小包の內容を完全に示す表を附さなければならない。

第二十條〔病院船の保護〕

 紛爭當事國は、死亡を確認すること、死者を識別すること及び報告書の作成を可能にすることを目的として、事情が許す限り各別に行われる死者の水葬を行う前に、死體の綿密な検査、できれば醫學的検査を行うことを確保しなければならない。復式の識別票が使用されている場合には、その一片は、死體に殘さなければならない。

 死者は、陸に移された後は、戦地にある軍隊の傷者及び病者の狀態の改善に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ條約の規定の適用を受けるものとする。

第二十一條〔保護の消滅〕

 紛爭當事國は、中立國の商船、ヨット又はその他の舟艇の船長に対し、傷者、病者及び難船者を船內に収容し、且つ、看護し、並びに死者を船內に収容するように、その慈善心に訴えることができる。

 この要請に応じたすべての種類の船舶及び傷者、病者及び難船者を自発的に収容した船舶は、それらの援助を行うために特別の保護及び便益を享有する。

 それらの船舶は、いかなる場合にも、そのような輸送を理由としては捕獲されないものとする。但し、反対の約束がない限り、中立違反の行為があった場合には、そのため捕獲されるものとする。

第三章 病院船

第二十二條〔軍用病院船〕

 軍用病院船、すなわち、傷者、病者及び難船者に援助を與え、それらの者を治療し、並びにそれらの者を輸送することを唯一の目的として國が特別に建造し、又は設備した船舶は、いかなる場合にも、攻撃し、又は捕獲してはならないものとし、また、それらの船舶が使用される十日前にその船名及び細目が紛爭當事國に通告されることを條件として、常に尊重し、且つ、保護しなければならない。

 前記の通告において掲げる細目は、登録総トン數、船首から船尾までの長さ並びにマスト及び煙突の數を含むものでなければならない。

第二十三條〔海岸施設〕

 戦地にある軍隊の傷者及び病者の狀態の改善に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ條約の保護を受ける権利を有する海岸施設は、海上からの砲撃又は攻撃から保護しなければならない。

第二十四條〔救済団體の病院船〕

 各國赤十字社、公に公認された救済団體又は私人により使用される病院船は、それらが屬する紛爭當事國により公の使命を與えられ、且つ、第二十二條に定める通告が行われた場合には、軍用病院船と同一の保護を受けるものとし、また、捕獲されないものとする。

 これらの船舶は、責任のある當局が発給した証明書でそれらの船舶がぎ裝中及び発航の際その監督下にあった旨を記載するものを備えなければならない。

第二十五條〔中立國救済団體の病院船〕

 中立國の赤十字社、公に承認された救済団體又は私人により使用される病院船は、あらかじめ自國政府の同意及び関係紛爭當事國の認可を得て紛爭當事國の一の管理の下にあることを條件として、第二十二條に定める通告が行われた場合に限り、軍用病院船と同一の保護を受けるものとし、また、捕獲されないものとする。

第二十六條〔トン數〕

 第二十二條、第二十四條及び第二十五條に掲げる保護は、いかなるトン數の病院船及びその救命艇についても、それらが作業を行っている場所のいかんを問わず、適用する。紛爭當事國は、安楽及び安全を最大限に確保するため、公海における遠距離にわたる傷者、病者及び難船者の輸送には、総トン數二千トン以上の病院船のみを使用するように努めなければならない。

第二十七條〔沿岸救助艇〕

 沿岸救助作業のため國又は公に承認された救助団體により使用される小舟艇は、第二十二條及び第二十四條に定める條件と同様の條件で、作戦上の要求が許す限り、同様に尊重し、且つ、保護しなければならない。

 前項の規定は、人道的使命のためもっぱらそれらの小舟艇が使用する沿岸固定施設についても、できる限り適用する。

第二十八條〔病室の保護〕

 軍艦內で戦闘が行われる場合には、できる限り病室を尊重し、且つ、これに対する攻撃を差し控えなければならない。それらの病室及びその設備は、引き続き戦爭法規の適用を受けるものとする。但し、傷者及び病者のため必要とされる限り、その使用目的を変更してはならない。もっとも、それらの病室及び設備をその権力內に有するに至った指揮官は、緊急な軍事上の必要がある場合には、それらの病室の中に収容されている傷者及び病者に対する適當な看護を確保した後、それらの病室及び設備を他の目的に使用することができる。

第二十九條〔占領地の港にある病院船〕

 敵の権力內に陥った港にある病院船は、その港から出港することを許される。

第三十條〔病院船、小舟艇の使用〕

 第二十二條、第二十四條、第二十五條及び第二十七條に掲げる船舶及び小舟艇は、傷者、病者及び難船者に対し、その國籍のいかんを問わず、救済及び援助を與えなければならない。

 締約國は、それらの船舶及び小舟艇をいかなる軍事目的のためにも使用しないことを約束する。

 それらの船舶及び小舟艇は、いかなる方法によっても、戦闘員の行動を妨げてはならない。

 戦闘の間であると戦闘の後であるとを問わず、それらの船舶及び小舟艇は、自己の危険において行動するものとする。

第三十一條〔監督、臨検捜索〕

 紛爭當事國は、第二十二條、第二十四條、第二十五條及び第二十七條に掲げる船舶及び小舟艇を監督し、及び臨検捜索する権利を有する。紛爭當事國は、それらの船舶及び小舟艇からの援助を拒否し、それらに退去することを命じ、その航行すべき方向を指定し、その無線電信その他の通信手段の使用を監督し、並びに、重大な事情により必要がある場合には、停船を命じた時から七日をこえない期間それらを抑留することができる。

 紛爭當事國は、船內に一人の監督官を臨時に乗り込ませることができる。その監督官は、前項の規定に従って與えられる命令が遂行されることを唯一の任務とする。

 紛爭當事國は、できる限り、病院船の船長に與えた命令を當該船長が理解する言語で病院船の航海日誌に記入しなければならない。

 紛爭當事國は、この條約の規定の厳格な遵守を証明させるため、一方的に又は特別の合意により中立國のオブザーヴァーを病院船に乗り込ませることができる。

第三十二條〔中立國の港における碇泊〕

 第二十二條、第二十四條、第二十五條及び第二十七條に掲げる船舶及び小舟艇は、中立國の港におけるてい泊に関しては、軍艦と同一視されることはないものとする。

第三十三條〔改裝された商船〕

 病院船に改裝された商船は、敵対行為が継続する期間を通じ、他のいかなる使用にも充ててはならない。

第三十四條〔保護の消滅〕

 病院船及び軍艦內の病室が享有することができる保護は、それらが人道的任務から逸脫して敵に有害な行為を行うために使用された場合を除く外、消滅しないものとする。但し、その保護は、すべての適當な場合に合理的な期限を定めた警告が発せられ、且つ、その警告が無視された後でなければ、消滅させることができない。

 病院船は、特に、その無線電信その他の通信手段のために暗號を所持し、又は使用してはならない。

第三十五條〔保護をはく奪してはならない條件〕

 次の事実は、病院船又は軍艦內の病室に與えられる保護をはく奪する理由としてはならない。

  • (1) 當該病院船又は軍艦內の病室の乗組員が秩序の維持並びに自衛又は傷者及び病者の防衛のために武裝していること。
  • (2) もっぱら航海又は通信を容易にするための裝置が船內にあること。
  • (3) 傷者、病者及び難船者から取り上げた攜帯用武器及び弾薬でまだ適當な機関に引き渡されていないものが當該病院船又は軍艦內の病室にあること。
  • (4) 當該病院船及び軍艦內の病室又はそれらの乗組員の人道的活動が文民たる傷者、病者又は難船者の看護に及んでいること。
  • (5) 當該病院船がもっぱら衛生上の任務に充てられる設備及び要員を通常の必要以上に輸送していること。

第四章 要員

第三十六條〔病院船の要員の保護〕

 病院船の宗教要員、衛生要員及び看護員並びにその乗組員は、尊重し、且つ、保護しなければならない。それらの者は、病院船で勤務している間は、船內に傷者及び病者がいるといないとを問わず、捕えてはならない。

第三十七條〔その他の船舶の要員〕

 第十二條及び第十三條に掲げる者の衛生上又は精神上の看護に従事する宗教要員、衛生要員及び看護員は、敵の権力內に陥った場合においても、尊重され、且つ、保護されるものとする。それらの要員は、傷者及び病者の看護のために必要である限り、その任務を引き続き行うことができる。それらの要員は、それらの者をその権限の下に置く総指揮官が可能と認めるときは、直ちに送還されるものとする。それらの要員は、船舶を離れるに當っては、その私有の財産を持ち去ることができる。

 もっとも、捕虜の衛生上又は精神上の要求により前記の要員の一部を抑留することが必要である場合には、できる限りすみやかにそれらの要員を下船させるため、あらゆる措置を執らなければならない。

 抑留された要員は、下船と同時に、戦地にある軍隊の傷者及び病者の狀態の改善に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ條約の規定の適用を受けるものとする。

第五章 衛生上の輸送手段

第三十八條〔衛生設備輸送の傭船〕

 衛生上の輸送の目的のためによう船された船舶は、その航海に関する明細が敵國に通告され、且つ、敵國によって承認されていることを條件として、もっぱら軍隊の傷者及び病者の治療又は疾病の予防のために充てられる設備を輸送することを許される。敵國は、輸送船を臨検する権利を有する。但し、それらを捕獲し、又はそれらが輸送中の設備を押収する権利は、有しない。

 紛爭當事國間の合意により、輸送中の設備の検査証明に當らせるため、前記の船舶に中立國のオブザーヴァーを乗り込ませることができる。このため、そのオブザーヴァーは、それらの設備を自由に検査することができる。

第三十九條〔衛生航空機〕

 紛爭當事國は、衛生航空機、すなわち、もっぱら傷者、病者及び難船者の収容並びに衛生要員及び衛生材料の輸送に使用される航空機を、それらの航空機が関係紛爭當事國の間で特別に合意された高度、時刻及び路線に従って飛行している間、攻撃の対象としてはならず、尊重しなければならない。

 衛生航空機は、その下面、上面及び側面に、第四十一條に定める特殊標章を自國の國旗とともに明白に表示しなければならない。衛生航空機は、敵対行為の開始の際又は敵対行為が行われている間に交戦國の間で合意される他の標識又は識別の手段となるものを付さなければならない。

 反対の合意がない限り、敵の領域又は占領地域の上空の飛行は、禁止する。

 衛生航空機は、著陸又は著水を要求された場合には、その要求に従わなければならない。そうして著陸を強制された場合には、航空機及びその要員は、検査があるときはそれを受けた後、飛行を継続することができる。

 傷者、病者及び難船者並びに衛生航空機の乗員は、敵の領域又は占領地域內に不時著陸又は不時著水した場合には、捕虜となるものとする。衛生要員は、第三十六條及び第三十七條の規定に従って待遇されるものとする。

第四十條〔中立國上空の飛行〕

 紛爭當事國の衛生航空機は、第二項の規定に従うことを條件として、中立國の領域の上空を飛行し、必要がある場合にはその領域に著陸し、又はその領域を寄航地として使用することができる。それらの衛生航空機は、當該領域の上空の通過を事前に中立國に通告し、且つ、著陸又は著水のすべての要求に従わなければならない。それらの衛生航空機は、紛爭當事國と関係中立國との間で特別に合意された路線、高度及び時刻に従って飛行している場合に限り、攻撃を免かれるものとする。

 もっとも、中立國は、衛生航空機が自國の領域の上空を飛行すること又は自國の領域內に著陸することに関し、條件又は制限を附することができる。それらの條件又は制限は、すべての紛爭當事國に対して平等に適用しなければならない。

 中立國と紛爭當事國との間に反対の合意がない限り、現地當局の同意を得て衛生航空機が中立地城に積み卸す傷者、病者及び難船者は、國際法上必要がある場仝には、軍事行動に再び參加することができないように中立國が抑留するものとする。それらの者の入院及び収容のための費用は、それらの者が屬する國が負擔しなければならない。

第六章 特殊標章

第四十一條〔標章の使用〕

 白地に赤十字の紋章は、権限のある軍當局の指示に基き、衛生機関が使用する旗、腕章及びすべての材料に表示しなければならない。

 もっとも、赤十字の代りに白地に赤新月又は赤のライオン及び太陽を特殊標章として既に使用している國については、それらの標章は、この條約において同様の認められるものとする。

第四十二條〔要員の識別〕

 第三十六條及び第三十七條に掲げる要員は、特殊標章を付した防水性の腕章で軍當局が発給し、且つ、その印章を押したものを左腕につけなければならない。

 前記の要員は、第十九條に掲げる身分証明書の外、特殊標章を付した特別の身分証明書を攜帯しなければならない。この証明書は、防水性で、且つ、ポケットに入る大きさのものでなければならない。この証明書は、自國語で書かれていなければならず、また、この証明書には、所持者の氏名、生年月日、階級及び番號を示され、且つ、その者がいかなる資格においてこの條約の保護を受ける権利を有ずるかが記載されていなければならない。この証明書には、所持者の寫真及び署名若しくは指紋又はそれらの雙方を附さなければならない。この証明書には、軍當局の印章を浮出しにして押さなければならない。

 身分証明書は、同一の軍隊を通じて同一の型式のものであり、且つ、できる限りすべての締約國の軍隊を通じて類似の型式のものでなければならない。紛爭當事國は、この條約に例として附屬するひな型にならうことができる。紛爭當事國は、敵対行為の開始の際、その使用する身分証明書のひな型を相互に通報しなければならない。身分証明書は、できれば少くとも二通作成しなければならず、その一通は、本國が保管しなければならない。

 いかなる場合にも、前記の要員は、その記章又は身分証明書を奪われないものとし、また、腕章をつける権利をはく奪されないものとする。それらの要員は、身分証明書又は記章を紛失した場合には、身分証明書の複本を受領し、又は新たに記章の交付を受ける権利を有する。

第四十三條〔病院船の標識〕

 第二十二條、第二十四條、第二十五條及び第二十七條に掲げる船舶及び小舟艇は、次のように特別の表示をしなければならない。

  • a  すべての外面は、白色とする。
  • b  海上及び空中からの最大限の可視度を確保するように、できる限り大きい一又は二以上の濃色の赤十字を船體の各側面及び水平面に塗って表示するものとする。

 すべての病院船は、その國旗を掲げることによって識別されるものとし、また、それらの病院船が中立國に屬している場合には、その外にそれらの病院船が指揮を受ける紛爭當事國の國旗を掲げることによって識別されるものとする。メイン?マストには、白地に赤十字の旗をできる限り高く掲げなければならない。

 病院船の救命艇、沿岸救命艇及び衛生機関により使用されるすべての小舟艇は、白色に塗り、且つ、明白な濃色の赤十字を表示するものとし、また、一般に、病院船のための前記の識別方法に従うものとする。

 前記の船舶及び小舟艇で、それらが受ける権利がある保護を夜間及び司視度が減少したときに確保することを希望するものは、それらをその権限の下に置く紛爭當事國の同意を條件として、その塗裝及び特殊標章を充分に明白にするため必要な措置を執らなければならない。

 第三十一條に従って一時的に敵國により抑留された病院船は、それらが屬する紛爭當事國又はそれらが指揮を受ける紛爭當事國の國旗をおろさなければならない。

 沿岸救命艇は、占領された基地から占領國の同意を得て引き続き作業する場合には、すべての関係紛爭當事國に対して予告することを條件として、基地を離れている間、白地に赤十字を付した旗とともに自國の國旗を掲げることを許される。

 赤十字の標章に関する本條のすべての規定は、第四十一條に掲げるその他の標章についても、ひとしく適用する。

 紛爭當事國は、病院船の識別を容易にするための最新式の方法を使用するため、相互に協定を締結するように常に努力しなければならない。

第四十四條〔標識の使用制限〕

 第四十三條に掲げる識別用の標章は、他のいずれかの國際條約又はすべての関係紛爭當事國間の協定に規定する場合を除く外、平時であると戦時であるとを問わず、同條に掲げる船舶の標識又は保護のためにのみ使用することができる。

第四十五條〔濫用の防止〕

 締約國は、自國の法令が充分なものでないときは、第四十三條に定める識別用の標章の濫用を常に防止し、且つ、抑止するため必要な措置を執らなければならない。

第七章 條約の実施

第四十六條〔細目の実施〕

 各紛爭當事國は、その総指揮官を通じ、この條約の一般原則に従い、前各條の細目にわたる実施を確保し、且つ、この條約の予見しない事件に備えなければならない。

第四十七條〔復仇の禁止〕

 この條約によって保護される傷者、病者、難船者、要員、船舶、小舟艇又は材料に対する報復的処置は、禁止する。

第四十八條〔條約の普及〕

 (第一條約の第四十七條と同じ。)

第四十九條〔訳文、適用法令〕

 (第一條約の第四十八條と同じ。)

第四十四條〔標識の使用制限〕

 第四十三條に掲げる識別用の標章は、他のいずれかの國際條約又はすべての関係紛爭當事國間の協定に規定する場合を除く外、平時であると戦時であるとを問わず、同條に掲げる船舶の標識又は保護のためにのみ使用することができる。

第四十五條〔濫用の防止〕

 締約國は、自國の法令が充分なものでないときは、第四十三條に定める識別用の標章の濫用を常に防止し、且つ、抑止するため必要な措置を執らなければならない。

第七章 條約の実施

第四十六條〔細目の実施〕

 各紛爭當事國は、その総指揮官を通じ、この條約の一般原則に従い、前各條の細目にわたる実施を確保し、且つ、この條約の予見しない事件に備えなければならない。

第四十七條〔復仇の禁止〕

 この條約によって保護される傷者、病者、難船者、要員、船舶、小舟艇又は材料に対する報復的処置は、禁止する。

第四十八條〔條約の普及〕

 (第一條約の第四十七條と同じ。)

第四十九條〔訳文、適用法令〕

 (第一條約の第四十八條と同じ。)

第八章 濫用及び違反の防止

第五十條〔罰則〕

 (第一條約の第四十九條と同じ。)

第五十一條〔重大な違反行為〕

 (第一條約の第五十條と同じ。)

第五十二條〔締約國の責任〕

 (第一條約の第五十一條と同じ。)

第五十三條〔調査手続〕

 (第一條約の第五十二條と同じ。)

第五十四條〔用語〕

 (第一條約の第五十五條と同じ。)

第五十五條〔署名〕

 本日の日付を有するこの條約は、千九百四十九年四月二十一日にジュネーヴで開かれた會議に代表者を出した國及び同會議に代表者を出さなかった國で、千九百六年のジュネーヴ條約の原則を海戦に応用するための千九百七年十月十八日の第十ヘーグ條約又は戦地軍隊における傷者及び病者の狀態改善に関する千八百六十四年、千九百六年若しくは千九百二十九年のジュネーヴ條約の締約國であるものに対し、千九百五十年二月十二日までその署名のため開放される。

第五十六條〔批準〕

 (第一條約の第五十七條?第五十八條と同じ。)

第五十七條〔効力の発生〕

 (第一條約の第五十八條と同じ。)

第五十八條〔舊條約との関係〕

 この條約は、締約國間の関係においては、千九百六年のジュネーヴ條約の原則を海戦に応用するための千九百七年十月十八日の第十ヘーグ條約に代るものとする。

第五十九條〔加入〕

 (第一條約の第六十條と同じ。)

第六十條〔加入の通告〕

 (第一條約の第六十一條と同じ。)

第六十一條〔直接の効果〕

 (第一條約の第六十二條と同じ。)

第六十二條〔廃棄〕

 (第一條約の第六十三條と同じ。)

第六十三條〔國際連合への登録〕

 (第一條約の第六十四條と同じ。)

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